むらさきmusicラボ、坂本真理のソロコンテンツプログラム「リズムクエスト」を初めて楽団「ぺとら」として「体験型コンサート」として公演させていただきました。
「リズムクエスト」は、2012年に故小澤敏也(元ぺとらメンバーのつるさん、私のパーカッションの師匠)と二人でスタート、初回は東日本大震災後の保養所「こめらの森」で、ロールプレイングゲームのようにいろんな国のリズムをクリアしていくことで、自分のレベルをあげられたらいいね!という学習、レッスンなどと異なる切り口の音楽体験をリトミックとパーカッションのコラボでできないかな?と思って作ったプログラムです。小澤さんが亡くなった直後、二人でオファーをいただいたところ、ひとりで公演させていただいたのをきっかけに、腹をくくって小澤さんが「ぺとら用」に遺してくれた楽器で私ひとりで継続したのがきっかけ。その後、民族楽器を元にその仕組みを理解した上で創作する手作り楽器を加えて、教員生活で培った発達年齢ごとに異なる口上で楽器の説明や体験を促す楽器とリトミックの「ロールプレイングゲーム」を公民館や保育園で実績を積み重ねてきました。
私単体で行う「リズムクエスト」は、ひとりで演奏するのにも限りがあるので、PC打ち込みで作ったものや既存の音源も使用したり、ピアノやパーカッション演奏以外の音環境にも頼らざる得ないのですが、こうして「ぺとら」の生演奏で助けていただいて、本当に楽しかったです。
生演奏といっても、コンサートのように譜面どおり、予定通りのことを演奏するのではなく、お子様の状態によって、臨機応変に指示を出して、それに即時に応えてもらっての演奏です。2007年の「ぺとら」創設オリジナルメンバーの近藤さんは、ほぼ私のハンドサインを理解してくださって尺を調節してくださる心強い味方です。立岩さんとも、旧知なのですが、メンバーとして加わっていただいたのは、小澤さんの没後に選手交代という形で加入していただきました。それと同時に、小澤さんが担当していたブラジル&アフリカのパーカッションは、私が担当することになり、立岩さんの専門のインド〜アラブのリズムの要素がぺとらに加わりました。
「リズムクエスト」のぺとらver.は、これからもバージョンアップをしていく予感がしています。
写真左から バグパイプ他欧州古楽器 近藤治夫、リトミック、キーボード、ブラジリアンパーカッション 坂本真理、オリエンタルパーカッション 立岩潤三
今回は、消毒作業しやすい手持ち楽器を中心に体験用に用意しました。
感染防止対策で、マレットやスティックを使用度にアルコール消毒するサポートを図書館職員さんにご協力いただきました。感謝!
体験楽器はコーナーごとにストーリーがあります。
写真1)
おはじき木琴 音階ではなくランダムに打ち付けた木琴は、スリットドラムを意識してつくりました。マレットではなく、おはじきや碁石をパラパラと撒くことで偶然性のメロディを楽しんでいただくものです。
箱鉄琴 ビー玉を転がして音階を楽しむおもちゃ楽器を作りました。
カリンバコーナー タンザニアの伝統楽器、アフリカの土産物ブランド(アフリカ的な美音ポイントのジリジリ音を王冠で再現)、インドネシアの土産物ブランド(素焼きで共鳴壺付き)カリンバは、ピアニカ同様の商品名なので、土地によって楽器を意味する「ムビラ」など様々な名前があります。「親指ピアノ」と呼んであげるのが、私は好きです。ラボにはまだまだたくさんの「カリンバ」の仲間が小さいのから大きいのもあります。また機会があれば、それらの対比と違いのグラデーションについても「リズムクエスト」をしてみたいですね。
ツィターコーナー 私がモスクワで購入したおもちゃのツィターは、ラボでも大人気の楽器です。これを模して、1本弦の「モノコード」、「複数弦コード」をテグス糸やいろんな種類のゴムで彩りよく製作しました。午前中の幼児の回では、裏面にあるチンパンジーやゴリラ、様々な猿の仲間の写真を貼ったサイドを展示して、カルタのようにひっくりかえしえ遊べるギミックを施しました。ツィターの仲間には、おおきくいうと琴だけれども、ハンマーで叩くものや、ギターのようにかまえて爪弾くものなど様々なバリエーションがあります。その雰囲気を「サルの仲間」で表現してみました。
写真②
手作りフレームドラム 幼稚園で不要になった鼓笛隊の小太鼓を輪切りにした筒に、楽器店で購入した羊皮を木工ボンドで貼ったものです。皮の部位にもよるのか、ランダムに筋膜のような模様があって「生き物感」がたっぷりのものです。体験コーナーでは、アラブリズムの「マクシーム」を6時の場所に持つポジションで「ぺとら」とともに演奏してもらいました。
ズンチャカ楽器セット 四角いアデュフェを模したバリエーション、左右対象に留意したペットボトルシェイカーのバリエーションなど、全部異なるものを作りました。
カシシ ブラジルの振る楽器、ラボではキットで編む他、アイスの蓋や紙糸で全部手作りする方法もご紹介しています。「エスペランサ」のセミオーダーキットで、中身のビーズを自分でいれて好みの音程をつくるチューニングにも対応しています。
写真③カウベルブリッジ
スイスの土産物の牛のためにつけるタイプのものや、サルサなどラテン音楽用にチューニングされたものの展示をメインに、その音の高さが大きさに比例することを示すためにトライアングルを3つの大きさにしたもの、アナウンスチャイム(3つの棒の長さの違い)、大きさの違う灰皿などブリッジ状にして演奏しやすく並べたもの。
ウォッシュボード 19世紀はじめころにアメリカのデキシーランドジャズなどで活躍した洗濯板にシンバルなどをくっつけた楽器があります。演奏用のものは高価なのですが、私の自作のものは、屋根材の板のギザギザ、朝顔のタネ、鍋の蓋などでドラムのように多彩な音を自分でコントロールする楽しみを追求したものです。
おはしマレットと小さい太鼓たち こども用のお箸(持ちやすい長さ)で様々な素材のヘッドのマレットを作っています。音の違いを試しやすいように、小型のジェンベなどテづガルな手持ち太鼓を揃えています。
単身の「リズムクエスト」時と同様に、「プレイバルーン 」もしました。
感染防止のため、いくつか断念したアクティビティもありますが、午前の幼児親子の部、午後の小学生以上〜一般の部も参加者の皆様、スタッフの皆様のご協力のおかげで、それぞれの年齢に見合った活動をご紹介できました。言葉の指示とタイミングのコツはありますが、生演奏のビートにあわせて、自らが動くだけではなく参加者全員が共同体として音楽によって動かされる体験をしていただきました。
園や学校やスクールで発表の目的だったり、体育笛の合図で行う体育的なプレイバルーンと異なり、私のリードするプレイバルーン は、自分で自分を決めるリトミックの延長上にあります。正解がなく、間違えもないけれど、上手にできた人は、必ず褒めます。今回は、男子小学生が、女子のパート何人分もの持ち場を身体全体でカヴァーしてくれたことが印象的でした。
「サウンドスケープ」で楽器で風景画を描くような体験をしたり、合奏のパート「JOY」では、それぞれが思いのまま自分で見つけた奏法で自由演奏をしてもらいました。
幼稚園園長の経験から、遊びでも「ドッジボール」「鬼ごっこ」などを先生が中心となって鬼決めなどの配慮をする「設定あそび」よりも、こどもたちの興味を見守る「自由あそび」の方が難易度が高いと認識しています。
こどもの能力の許容量のコップには、限りがあると私は思っています。「宿題のない国の方が頭が良い子が多い」という意見もあります。ぼーっとしたり、自分で考えるチャンスは、いつでもころがっているわけではなく、実はとても贅沢なことだと私は思っています。ぺとらのワールドミュージックとともに、アンサンブルを楽しんでいただくには、この方法はぴったりだと思いました。ステージからみる皆さんの表情や、カウベルを赤ちゃんのように大事に抱えてオリジナルの奏方を考えたり、トレモロ奏法を楽しんだりする様子を微笑ましく拝見しながら演奏することができました。
東葛西図書館階段展示にて、楽団「ぺとら」の紹介コーナーが展開中していただきました。
図書館としては、ぺとらの公演を体験されたみなさまがワールドミュージックコーナーのCDを視聴したり、関連図書の貸し出しにつながればということで熱い展開をしてくださっています。
2021年3月30日(火)
1回目『リズムクエスト』〜世界の楽器であそぼう!〜
11:00~11:40(10:45開場)
対象 3歳〜未就学児とその保護者1名 20組(満員御礼)
2回目『ぺとらのおもしろ楽器コンサート』
14:00~15:00(13:45開場)
対象 小学生以上(大人可) 50名(満員御礼)
開場 江戸川区東葛西コミュニティ会館 3階スポーツルーム
2公演とも満員御礼となりました。
午前の部は、予約開始3日目の朝というスピード完売です。
記念に写真を撮らせていただきました。(撮影 立岩潤三)