ご来場 御礼


福島県須賀川市文化センター「無声映画上映会すまいる座〜みんなで感じて笑いましょう〜」に賑々しいご来場を賜り誠にありがとうございました。怪我のため療養に入られた澤登翠先生にかわり、『のらくろ伍長』と『キートンの滑稽恋愛三代記』を山内菜々子、『チャップリンの消防夫』を尾田直彪が代演しました。

我々、無声映画一座を暖かく迎え入れてくださった仁井田のみなさま、会場のスタッフさま、中学生のボランティアのみなさまとの楽しく、暖かく、あっという間の楽しい時間と空間を楽士の目線でレポートさせていただきたいと思います。

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大ホールの楽屋をスタッフ含め、ひとりひと部屋を頂戴いたしました。感謝!

弁士の交代ということで、裏方の皆様にはご心配をかけたことと慮ります。スタッフさまが手に持つ進行表に「坂本真理」の自分の名前を見つけると、おおきく「そのまま」と、ありました。ご苦労が偲ばれます。「坂本真理」の方が公演チラシどおりで残った方です。

小学館図鑑NEO 音楽 特別展示コーナー

 

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公演当日まで、ロビーのご当地の特産物販売ブースの商品など、このカートに積んでご準備をされていたんだろうな〜というオーラを放つカートを発見!
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このような展示をささっと設営してくださいました。イベント経験値の高さがうかがえて脱帽!

小学館図鑑NEO音楽 私が楽器所有者として協力させていた楽器(21種類の打楽器)の閲覧。持参した図鑑収録楽器「カシシ」と同タイプのもの(エスペランサのカシシ用のバスケット素材をもとに自作したキット)と、図鑑の各ページにあるQRコードを体験するというナビゲートをなんと!地元の中学生ボランティアの皆様が担当してくださっていました。中学生さんたちのご活躍の様子は、後日、写真を送ってくださるそうで、とても楽しみにしています。

開演前エピソード

チャップリンの時代のピッチ 440Hzでの演奏実現

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福島県須賀川市文化センター大ホールは、客席数 1,070席(固定席)。

実は今回は、主催者さま、会場のご好意により、ホール併設のグランドピアノをコンサートピッチの442Hzから、国際ユニバーサル標準ピッチの440Hzとすることで、「無声映画時代、チャップリンが聴いていた音と同じサウンド」という私の個人的なリクエストを受け入れていただきました。YouTubeには、投稿されている動画の多くに「ラグタイム」など、いかにも無声映画にでてきそうな軽やかなピアノ曲などがBGMに使われていますね。それは、音楽の著作権が作曲者の没後70年後に切れるため、自由に使用することができるからです。『エンターテイナー』  スコット・ジョプリン作曲 は、代表的なラグタイム音楽です。
このような素朴曲を、大掛かりなライブや、ウィーンフィル、NHK交響楽団で使用されている442Hzで演奏すると、キラキラしすぎて、何か落ち着かない気分になると思うのです。チューニングについて詳しくは、前Note記事もご参照ください。

『本日の無声映画上映は、チャップリンの時代と同じ国際ユニバーサルピッチ(1939年ロンドン会議で設定)で演奏されます。』
本上映前の主催 司会者様からも、このようなアナウンスがされました。ピッチだけを当時のものにしても、演奏方法が、それに見合わないと価値がなくなってしまうので、ストライド・ピアノや、当時っぽい演奏技法を映画のシーンに応じて盛りだくさんに詰め込みました。特に、『キートンの滑稽恋愛三代記』では、オムニバスの当時の現代1923年シーン(使用楽曲など、詳しくは、前Note参照)では、主人公の気持ち変化に応じて、リズムが、だんだんと30年代に寄せたのスウィングが多めに、焦っている時などは、シャッフルもかけています。現在は、曲の演奏や、アーティスト、目的にあわせてチューニングを変えることがありますが、無声映画時代には、チューニングは440Hzのみだったので、様々なとっぴなリズムが流行りとして生まれて、「チャールストンコンテスト」などの流行りのステップを覚えた遊びも多々あるリズムの時代でした。ピッチとリズムとどちらが欠けても、当時の音楽の再現はできませんから、本当に昨日の公演は、私自身も「滅多にないチャンス!」を楽しんで演奏させていただきました。

シンセ&ピアノ 2台駆動のサウンドチェック

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注:ここでの「坂本真理」は、すっぴんメガネの「まり先生モード」です。
サウンドチェック中 生のピアノ音とシンセの音があわさって中央スピーカーから聴こえるように、また、ディレイをきにしないように、モニタースピーカーからは、シンセ音のみが聴こえるように調整をお願いしました。

今回は、大ホールなので、「ぜひピアノの生演奏を」という声と、「坂本真理の無声映画シンセ演奏は見ておけ!」的なご要望もあり、普段はやらないピアノ&シンセの同時セッティングです。前に「アントニーとクレオパトラ」という作品で、シンセとピアノをL字に配列したことはあったのですが、今回は上映作品の回転数などの理由で展開が早いので、椅子で90度に向き直るのは無理なので、グランドピアノの上にシンセを置く荒技です。

熟練のオペレーターさん(音響)の頼もしいアドバイスや、手直しもあって、本当に気持ちよく演奏を行うことができました。シンセでもサスティンペダルを使うのですが、そのケーブルの養生までしてくださって感激、感涙です。本当によくしていただきました!

仁井田のみなさんとのふれあいタイム

 

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中央の3人、下手から青衣装 坂本真理(楽士)山内菜々子(弁士)尾田直彪(弁士)
注:ここでの「坂本真理」は、メイク、衣装付きの「楽士、ミュージシャンモード」です。
本番前 地元の中学生ボランティアの皆さんと記念撮影

サウンドチェック時のすっぴんメガネと写真撮影と本番でのばっちりメイク&衣装とで、印象が違うため、終映後の「誰?」事件については、後のお楽しみ!

写真撮影、フォトセッション前のひとときの話です。
私は、楽団「ぺとら」やリトミック、楽器づくりのワークショップで、いろんなところに呼んでいただいています。福島県では、2019年に文化庁派遣芸術家公演福島県立西郷支援学校 小学部中学部にお邪魔しました。
はじめての場所にお邪魔する時の、私流の挨拶で、「なんでもリクエスト」でピアノを弾かせていただきます。「y⚫️asobi /ア⚫️ドル」「な⚫️わ男子 初⚫️LOVE」などを中学生のリクエストで弾かせていただきました。「初恋〜」は、なかなかメロディが思い出せなくて、中学生さんに、さわりの部分を歌ってもらって思い出しました。そんなやりとりをさせていただくことで、いつもちょっとだけ距離が縮まります。私は、絶対音感があるので、耳コピが得意。2~3回聴いた曲なら、それが何調に転調しても弾くことができます。

私の無声映画伴奏は、楽譜のない即興演奏なので、スクリーンの場面と、活弁の説明にあわせてぴったりとあわせることを目標としています。活弁とは、リハーサルをしないぶっつけ本番のことが多く、今回は代演だったので、本番の一発勝負。
それを楽譜などをなしに、シンセのボタン操作で音色を呼び出しながら演奏するのは舞台でみるとハラハラするらしいのですが、音楽演奏でいうところの「運動神経」「反射神経」を使うこのようなアサイン操作は、そのほかの楽器演奏でもいろいろあると思います。

「絶対音感のあるミュージシャンが、できること」という一芸のピアノリクエスト大会は、そんなわけで、自己紹介としてはもってこいですね。
かけっこが速い人、マラソンが得意な人、いろいろ多様性があるように、私の演奏は、ひとつの曲を楽譜に忠実に完璧に弾くことや、リストなどのクラシック超絶技巧は無理なのですが、耳で聴いたさまざまなリズムと、速度を映画から割り出して演奏することができます。
このようなスキルは、大人よりもこどもの方が先入観なしでできそうなので、無声いつか「ちびっ子楽士入門」のような講座、企画してほしいなぁ〜。

使用楽器について

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上映前 舞台挨拶をする澤登翠師匠の弟子 山内菜々子、尾田直彪 両弁士。
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本番 立ってシンセを演奏したり
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座ってピアノを演奏したり
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座ったままシンセを演奏したりしました。

シンセとピアノの両方を使うときには、今まではL字配列にしていたのですが、それだと、今回のステージ配置だとスクリーンが見えづらいこと、映画の回転数の関係で、すぐに場面転換があり、自分の向きをかえる時間がもったいないので、2段組みにしてみました。

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自営のむらさきmusicラボでのシミュレーション
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暗闇の中での操作性のシミュレーション

ここで私の愛機を紹介します。Roland JUNO-DS61です。高校生が軽音楽部に入って最初に買うようなエントリーモデルで、7万円ほどの消耗品です。私は、現在同じものを2台持っていて、ひとつは貸し出し用にしたり、早めに現場に宅配便で140センチサイズとして、楽器ではなく精密機器として配送してしまっています。万が一、現場で故障をしたとしても、アマゾンの各地のハブ倉庫には、必ず在庫しているので、プライム特典で30分で配送してもらえる。イオンモールなどの大手モールの「島村楽器」など、どの楽器店でも修理受付も可能。約5キロでリュックタイプのケース付きなので、背負って電車で運べるなどの利点があります。

私も、以前はKorgなどのシンセを使用していましたが、やはり修理を考えると国内産が安心。また、同じRolandでも、もっとハイクラスのものもあるだろうに、という意見もありますが、私は「むらさきmusicラボ」という音楽教室もやっているので、高校生が自分でバイトして買える値段の楽器ということも使う意味があると思っています。また、機能としては、無声映画にも充分だと思っています。

シンセ(シンセサイザー)は、音をくみあわせてつくることができる電気駆動の鍵盤楽器のことです。値段のランクではありません。そのほかの電子鍵盤楽器については、こちらのレビューにもかかせていただいています。小学館図鑑NEO音楽にもかなり詳しく説明されているので、そちらもご参考になさってください。シンセサイザーの中でもアナログ、モノラルはすごく高価でビンテージは骨董的な価値があるんですよ。

ピアノタッチ オルガンタッチ それぞれの奏法の違い

 

ピアノを習っている人ならピンとくると思うのですが、ピアノは打楽器なので、弾き方は、叩くように弾く「ピアノタッチ」。手の形は、お椀のようにまるくするように習います。

シンセは、「オルガンタッチ」で前の音が切れないように蛇のように這わせて弾きます。私は、ピアノは、ほぼ生まれつき弾いていて、オルガンは、足鍵盤に足が届く年齢ということで、小6からはじめました。シンセのみの時には、ピアノの音色を弾く時には、「ピアノタッチ」はもちろんですが、ハープやそのほかの楽器のモノマネをする時には、その奏法と音域を研究して、なるべくそれっぽく弾いています。

シンセでのSE   鳥笛 など

今回好評だった「犬の鳴き声」は、それぞれの犬の体格から、声の出る音の高さ(鍵盤)をあらかじめ決めています。大きい犬ほど、低い鍵盤。これは、シンセのサンプリング機能でつくられた音色です。

原始時代の鳥の鳴き声は、ブラジルの鳥笛 Maurilio/Maurios Coelho Pios Factoryの製品です。

私は、パーカッショニストも楽器製作もしています。今回、「チャップリンの消防夫」の尾田直彪 弁士には、テーブルベル、非常ベル用の楽器の指導もさせてもらい、楽器も進呈しました。これからの作品で、その技が活用されることを期待しています!

ついでのエピソード

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許可済み 尾形未紀 おたのしみ玉手箱 みきりん絵日記2024 1月より抜粋

さて、上映の方は、つつがなく、かつスリリングに無事に終映いたしました。記念品の贈呈までしていただき、イベントは幕を閉じました。人情に厚い山内菜々子弁士は、物販コーナーを盛り上げられていたスタッフの皆さんを労いつつ、特産品を購入されにロビーにもいかれた模様です。しかも、楽器撤収をしていた私の分にまで気を使ってくださって涙。(妹さんの分ですよね、と丁重にご辞退しました)
楽器と機材は再び配送用にパッキングして、メイクと衣装をオフして、いつもの「まり先生」モードにもどりました。上の写真は、私とのレッスンの模様をいつも可愛いイラストで描いてくださる漫画家の「尾形未紀」先生の描く「リアルまり先生」の姿。↓みきりん先生の最近のイチオシ書籍 配信も有名コミックサイトにて

世界放浪 バックパッカーは四歳児 (BAMBOO ESSAY SELECTION) コミック 

当日は、雨模様でおさまりましたが、積雪の可能性もあったので、私は毛糸帽子、防水加工のバイクツーリングジャケットのアウトドアおばさん姿。会場到着時や、リハーサルでの出立をしらない中学生や、地元の生産者たちは、もちろん、私がさっきまで演奏していた人とは気付きません。

私服までが可愛らしい山内菜々子、尾田直彪弁士たちも爽やかにお見送りの場に登場し、社長も含めマツダ映画社 旅の座組一行は、会場を後にしました。

仁井田の皆さまとは、私が寄贈した「小学館図鑑NEO 音楽」の地元ならではの活用法について、新たに素敵なやりとりのお約束もしていただき、交流もとても期待しています。

無声映画を初めてご覧になった方には、「台本」もそれぞれの弁士が執筆するということも重ねてお伝えしたいと思っています。
たとえ師匠の代演であっても、彼らは短い期間に、ベストを尽くして準備をされていました。

次回出演予定

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弁士代演 『キートン将軍』(19:45~)弁士/山城秀之、樗澤賢一、尾田直彪

澤登翠先生がお休みの間の代演は続きます。

第786回無声映画鑑賞会

[ラリー・キートン・チャップリン 新春ニコニコ大会]

1月30日(火曜)午後6時30分開演 

出演予定の山崎バニラ弁士のホームページ記事では、「リレー活弁」について温かいエールが送られていました。

カツベン おすすめ動画

活弁は、日本の伝承話芸であるのに、まだ「生のカツベン」をご覧になっていない方もいると思います。私は、楽士の立場ですが、毎回、一番スクリーンに近い特等席で、弁士さんたちの一生懸命な「ライブ」に触れることができて、本当に楽しくその場かぎりの一瞬をつなぎあわせたアンサンブルとして演奏をさせていただいています。

映画と、語り、生演奏。カツベンの魅力にどうぞはまってくださいませ!

今回は、やむを得ず欠番となってしまった澤登翠先生を含む、活躍中の活動写真弁士が大集合したYouTubeを最後にご紹介しますね。

2:11くらいに登場されるタキシード姿ショートカットの女性が澤登翠先生。そして、BGMの琴の音色は、舞台袖で、私がMacBookAirとMIDIコントローラーで演奏をしています。音源にしてはぴったり!と思ったでしょう〜。ノークレジットですが、ワタクシですよぉ〜。ここに登場している弁士、全員の伴奏経験があります。また、ここで、宣伝をしている映画「カツベン」でも、弁士の皆さんが活躍をしています。よかったら、ぜひチェックをしてみてくださいね。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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