無声映画の話①の話の続きです。
家族経営で自営していた「むらさき幼稚園」を創立50周年の年の2016年にに閉園と決め、3年がかりで園児募集を停止して、私の勤務期間中は最大で3学年で6クラスあった園児数を徐々に減らして、最後の年度は、ひとり担任でほぼ年長児、下の学年は転園先を確保したその弟妹のみの30数名で幕と閉じました。
園舎をラボとして使用する元すみれ組保育室を残して取り壊し、更地にして「むらさきmusicラボ」を設立したのが2016年6月。49歳で幼稚園園長からの再スタートで、ラボもまだ生徒も少なかったので、「無声映画楽士」のお声がけをいただいた時には、「好きなことで嬉しい!」という気持ちのほか、「やることがあって嬉しい!」という気持ちも正直あったと思います。なんやかんやで、それから、2022年までほとんど空白期間なく、ほぼ次の上映のことを考えて過ごす毎日をおくらせていただいています。
園長時代から、MacBookユーザーでしたが、幼稚園の退職金で、iMacやDTMに必要な機材、MIDI端子のついたキーボードもいろいろ買えました。新しく整えたラボのIKEAの収納家具などもあり、気持ちよく使ってしまいました。
ソロ楽士デビューした時から演奏に使用している機材
Roland JUNO-DS Synthesizer
61鍵盤のこのシンセを一貫して使用しつづけています。そして、私は2016年に楽士になるためにこの楽器を初めて買った初心者でした。
ちなみに、一般的に電気で動くピアノの代わりになる楽器や、鍵盤で演奏する楽器にはこのような種類があると言えるでしょう。
・電子ピアノ 一般的に「クラビノーバ」など鍵盤に重みのあるピアノタッチ、ピアノと同じ88鍵盤
・電子キーボード PCに入力する用のミニ鍵盤、おもちゃなど全てを含む鍵盤の楽器
・エレクトリックピアノ、ヴィンテージピアノ フェスで外タレが使うような「ローズピアノ」などのの名器はとても高価
・シンセサイザー 音と音を組み合わせて創造することのできるスペックのキーボード 鍵盤は軽いオルガンタッチ
ずっとバンド(楽団ぺとら)を継続していたので、Korg社製品など、いくつかのキーボード使用を渡り歩いてはきたのですが、私が最優先するのは「軽さ」で電車移動でひとりで持ち歩けることを優先するために、あえて61鍵盤の機材を選んでいます。(演奏中は、オクターバーというスイッチを操作して、ピアノ88鍵盤分の演奏をすることができます。)
この機種は、高校デビューの軽音楽部新入生が買える値段の定価¥85,800(安売りだと¥67000のもありました)の量産低価格モデルです。今まで何台もキーボードを電車移動中で躓いて壊した私の経験から、本番前にいざという時にすぐにamazonで買える、各地のイオンモール に必ず実機が置いてある入手しやすさで選んでいます。
音色の数は、ネットで検索した情報だとパッチ:1200 以上 ドラム・キット:30 以上 パフォーマンス:64 パッチ:256 ドラム・キット:8 パフォーマンス:128 フェイバリット:100 以下割愛….。
と、なんだかすごくたくさんあるようなのですが、独学でYouTubeやYahoo知恵袋に他人同志が質疑応答しているものをロムって知識を得ている程度の私が使いこなせているのは限られたもので、なおかつシンセ音色を避けて、無声映画にマッチするオーケストラ使用楽器や民族楽器は、何回も使っていくうちに限られている感じです。
映画のシーンごとにオーケストラ音色、ピアノ音色、打楽器や銃弾などのSEの音を当てるのですが、スイッチON状態だと、音色は膨大な量をカテゴリーボタン→ジョグダイヤルで番号呼び出しとなるので、シーン変わりに間に合わないので、「フェイバリットボタン」でその時に使う音色を1ボタンで呼び出します。
音色は、1コースに10までプリセットできるので、それ以上の音色が必要な場合には、数コースを使用することになります。
上記は、2022年3月上映のニコニコ大会用の音色で上部3段目までは「荒武者キートン」の音色で、大きな場面展開ごとに、コースを切り替えています。
「イントレランス 」などの長尺、大作になればなるほど、音色の数は多くなるので、今までの最大数の音色は、国立映画アーカイブのアフリカの動物たちが登場する無声映画「テンビ」でした。30以上の動物、全部に違う音色と生のアフリカの楽器をあてました。メディア紹介記事参照
さて、ここから先は、マイ「人間工学的な展開」での試行錯誤です。
操作ボタンは、10本の指のうち、演奏に使用していない空いている指を鍵盤の上の方に伸ばして、ボタンを押せる位置にあてがいます。
だから、同じ「銃声」を入れ込んだオケ音色でも、右手の方が空いている時と、左手の方が楽な時があるので、それぞれ違うボタンをあてています。
鍵盤上の音を間違えないように出すだけでも大変なのに、操作ボタンも弾きながら押しているので、できるだけ楽な位置は何処なのか?練習しながら位置を探ることになります。試行錯誤、努力の後が見える日々の記録たち。
音色は、例えば左手で「室内楽ストリングス」、右手で「琴」や、打楽器とピアノの組み合わせなど自由です。その場合の音量の差も、あらかじめプリセットできるので、例えば教会の鐘が遠くでなっているピアノでの情景などもできます。
「電話のベル」「雷」「犬」「銃声」などは、左か右の2音くらいをあてて、あとは通常のピアノなどのメインの領域にすることが多いです。銃声も、時代によって、銃の性能が異なるので、「大砲」など近い音色からアレンジすることもあります。
このような音色のプリセット作業は、何日もかかる複雑なマイ工程があり、それらが終わって担当の弁士さんに音源を送ると、ひとくぎり。データをUSBにバックアップにとって、作業と練習の場を自宅リビングのスタジオスペースから、ラボに引越し。現在、同機種を2台持ちしていて、自宅とラボ、または1台をマツダ映画社に預かってもらって、USBで最新の調整と同期させてながら使用しています。
ラボでは、大きなスクリーンで細部を確認しながら、最終調整のスクリーン通し練習のみを行なっています。
「無声映画の話③」につづく