プロローグ
我が家のひょうたん畑
こんにちは。むらさきmusicラボの「まり先生」こと、坂本真理です。
東京の田舎で家族経営の幼稚園園長を長年務めた後、今は幼稚園を閉じて「むらさきmusicラボ」という小さな音楽教室を営んでいます。元幼稚園園庭の広い農園を含む広い敷地に義父母家族と我が家の2世帯で暮らしています。
ひょうたんは、おもに義母が栽培していて材料として幼稚園全園児分を賄える量が確保でき、加工もしやすいので、これまでもいろんな工作を幼稚園園児たち、むらさきmusicラボのこどもたちとともにしてきました。
瓢箪の加工方法は、いろいろあると知りました。手間をかけて種を腐らせて取り除く方法は、悪臭もあるので、義父母たちはだんだんとシンプルな方向にシフトしてきています。
現在の私は、「むらさきmusicラボ」での指導のほか、保育園や、企業案件の楽器づくりワークショップなどのお誘いも受けるので、「数を確保したい」ということで、義父母の負担にならない方法ということで、収穫後はビニール温室でゆっくり自然乾燥をさせています。
ひょうたんは、収穫してすぐに使うというよりは、乾燥に時間をかけるので、「むらさきmusicラボ」の場合、こどもたちが工作に使えるひょうたんは、ひとつ前の年の収穫物ということが多いです。
シェケレワークショップ
私にとって大恩人!尊敬するパーカッショニスト・画家・妖怪研究家の渡辺亮さんのつながりで、2021年終わりくらいにしばらくぶりに「ひょうたん」とビーズ、糸でシェケレを編んでみると、子育ても終わり、幼稚園園長としての重積からも解き放たれて「ブラジル」でも「アフリカ」でもなく、「ビーズ」のひとつひとつがリトミックで音楽とともに身体を好き勝手に動かしているような「新しいシェケレ」のようなものを作れたことが嬉しく感じました。
いくつか作っていくうちに、「あがた森魚」さんやそのお仲間たちと一緒に「ワークショップ」も開催していただき、だんだんと私と同様な自由なシェケレの輪が広がってきました。
viva!手作りシェケレ
シェケレは、大きい楽器店にいけば、ひょうたんではなく樹脂のものが店頭にもあるかと思います。ひょうたんで作られたものは、割れるリスクがあるので、ネットでもたまに見かけるかな?という感じかもしれませんね。ブラジル北東部の伝統芸能「マラカトゥ・ナサォン」など、ブラジルでは、チームのシンボルカラーなどをビーズで幾何学模様として編み込んでいる美しい楽器たちが並んでいて惚れ惚れしてしまう。
手作りでもきちんと目数を数えてあらかじめデザインを決めれば、紋様にチャレンジすることもできると思います。でも、今の私は、それには興味がない。
誰かに見せてすごい!と言われることよりも、その時にパチパチ編む音を聴いて楽しんでつくりたい。
無心で音に没頭しながら作りたいという気持ちが強いです。
そして、音中心、チューニングをしながら作っていくと、だんだん楽器と対話をしているような気分になってきて、1段ごとにビーズを変えたり、編み方も2本どりから1本どりに変えたり、縦糸が足りなくなったら継ぎ足したりしても良い、というラフな編み方が楽しくなってきました。
ミュージシャンたちとのシェケレ談義
紋様もなく、ブラジルらしく、アフリカらしくという気持ちから離れて好き勝手に気ままにどんどんシェケレを編んでいきました。
シェケレは、なんといってもたくさんでの合奏が楽しい。
波打つ海のような微妙なうねりを感じて素敵なので、シルバーリトミック、保育士研修など、外部で講座でも可能なかぎり「1個ずつ違う楽器(シェケレ)」での合奏を体験していただいています。
また、無声映画の音楽制作、演奏のためにSE装置としても、いろんな楽器をつくってきました。
SNSに自分の作品としてシェケレを掲載すると、ミュージシャンたちからも反応があり、アフリカのガボンという国には、チューニングをした音名が書いてある「楽器」になっている皮の厚い立派なひょうたん楽器があることも教えていただきました。
糸やビーズをまとわずに単体でのひょうたん楽器は、ハワイの「イプ」もありますが、アフリカの人たちのそれは水に対する希少性、憧れも感じ取れるようです。
SNSのプロフィール写真がひょうたんなので、アフリカ方面などいろんな国の人からフレンド申請を頂戴して、動画を送ってもらったりなどの交流がはじまると、いろんな学びがありました。これらのことはまた次の機会に。
花形文化通信「ひょうたん日記」との出会い
SNSのおかげ様で素敵な出会いもありました。私のSNSのシェケレの写真をみて、花形文化通信「ひょうたん日記」の丸黄うりほさんが反応をくださったのです。すっかり意気投合して、私が京都に会いにいくと初対面とは思えないほど気持ちが通じあってしまい、丸黄うりほさんから全国の「ヒョータニスト」の皆さんも紹介していただき、うちの農園のひょうたん栽培の様子なども「ひょうたん日記」に掲載していただけるようになりました。
こどもたちに伝えたい「ひょうたん」のこと
こどもの「なぜ?」を育てる
「さぁ、これからお手本どおりに作りましょう!時間内に完成!」というのはどうもピンとこないタイプなので、いつもこどもたちのアイディアにふりまわされつつ、いつもドタバタです。
キット化された工作セットでは、すでに材料も切って、サンダーで整えてられていますが、私の場合は「切りたい」と言われたら、ノコギリを出し、トリマーしたいと言われれば「紙やすりは何番がいいか?」とこどもと一緒に考える感じです。ここで紹介する説明用のひょうたんや、こどもたちの作品は、そんな「のんびり マイペース」で自分で考えてオリジナルになってしまったものたちです。
水を運ぶ ふしぎな植物
ひょうたんは、世界中で「水を運ぶ植物」として、神聖な気持ちで重用されてきました。
なので、こどもたちは、水筒になるくらいだから、ひょうたんの中身はプラスチックのように、「ツルツル」していると思っているものです。
自然物での工作 世界にひとつ オリジン楽器
自然物であるひょうたんには、ひとつとして同じものはありません。また、生育過程でシミがついたり、カビがつくことさえ愛しい味わいとするヒョータニストたちの声も聞きました。
ひょうたん工作では、種を取り出し、中身を洗浄するといって「アワアワ、ぬるぬるごっこ」が始まります。そして、カッティングや種とりは、始末が楽な屋外テラスで行うと、あっという間に噂(匂い)をききつけた虫たちが大集合!小さい虫たちにとって「ひょうたん種」のかけらはご馳走なようで、そんな自然と共存しながら工作を楽しみ、そして音楽となっていく体験を積み重ねる幸せを感じています。
むらさきmusicラボのこどもひょうたん工作
むらさきmusicラボは、元幼稚園園長の私がひとりで営む音楽教室なので、「生きるための手先のスキル」も後進に伝えずにはいられません。個人レッスンのほかにいくつかの複数対応の場があり、そこではグループでリトミックなどをするほか、それぞれの個別のピアノレッスン。その順番待ち時間にそれぞれが思い思いの好きなことができるように、さまざまな素材を用意しています。
ピアノも指先だけ、音を間違えないように弾くだけなら、アプリでもことたりますが、生のグランドピアノとむきあって「良い音」を空間に響かせるようになるためには、動物と向き合うくらいのエネルギーが必要です。美しいと感じる感受性、脳のイメージを身体に伝えるために、さまざまな「リアル体験」を積むのも「総合芸術」だと思い、そんな私の考えに共感してくださるご家族が集まったのが「むらさきmusicラボ」なのです。詳しくはホームページをご参照ください。
わたしのひょうたん楽器たち(製作作品)
こどもたちがワンデイで楽しむとラボ時間の範囲内で製作する「ひょうたん楽器」とは他に、私がつくった楽器たちもあります。アーティストに提供した楽器たちは、それぞれのご本人の媒体でご紹介いただいているので、こちらでは手元にあるごく一部のものを。細かいものについては、Facebookのフォトアルバムにも掲載しています。
所蔵するひょうたん楽器
購入したり、譲り受けた「ひょうたん楽器」もご紹介しますね。
バラフォン:無声映画の楽士の活動では、ブッキングでお仕事をいただくのですが、一度だけ奇跡的にアフリカの野生動物のドキュメンタリー映画を担当ということで、アフリカの楽器を国立映画アーカイブに持ち込みました。こちらはその時に大活躍した「バラフォン」(アフリカ木琴)です。鍵盤の裏側にひとつの鍵盤あたり1つずつのひょうたんがついていて、蜘蛛の卵膜が貼ってあり味わい深い音色がします。私は、この楽器を高齢者のリトミックや、保育士研修でもそれぞれの目的をもって「体験型のプログラム」に活用しています。
カリンバ:親指ピアノの呼び方にはいろいろあるのですが、ここではポピュラーなカリンバと呼ぶことをお許しください。大きいのは、縁のあるところから幾人かの手を経て「こどもたちと一緒に奏でてほしい」ということでやってきたカリンバをひょうたんの割れ目などを丁寧に修復して再び、演奏できるようにしたものです。
小さいのは、関西空港ワールドフェアトレードセンターで購入したタンザニアの楽器です。
カシシ:私は、元幼稚園園長のスキルを活かし、現在、4つの保育園と保育企業の研修を担当しているのですが、そこでの私のイチオシは「カシシ」です。
「赤ちゃんが、一番最初に出会う楽器」
お座りができるくらいのベビーにカシシの音を聴かせると、自然に手がでて、音の方向を捕まえようとします。今では、100円ショップにも手頃な楽器もありますが、作り手の音の認識はさまざま。保育士さん自身が、「良い音」という概念に自信が持てないことも多いのですが、このような「良い音」「優しい音」「うるさくない音」のサンプルがあるとわかりやすいですよね。私が指導している園では、提携している岐阜の「エスペランサ」をおすすめしています。
また、「むらさきmusicラボ」では、エスペランサさんからひょうたん底、カラー染色した籐も購入させていただて随時ストックしているので、カポエイラをされる方が手にすっぽり納まるカシシを作りたい場合など、手作りワークショップにも随時対応しています。小学館図鑑NEO音楽のマラカス・シェーカーの仲間のコーナーにも上写真のブラジル柄のカシシは登場しています。(楽器所有者として、撮影時の楽器提供と、QRコード読み出しの演奏サンプルの録音にも協力させていただいています。
MARCOS CHINAの3連のカシシも、小学館図鑑NEO音楽の同ページの下段に掲載していただいています。(楽器所有者として、撮影時の楽器提供と、QRコード読み出しの演奏サンプルの録音にも協力させていただいています。)
これは、私のパーカッションの師匠 小澤敏也(故人)の遺品で、持ち手方向の上半分を私が修復しました。
岐阜のエスペランサの工房を訪ね、カシシの修復方法のヒントになること、基本の編み方、そして、エスペランサさん個人の神技職人芸にも感嘆しました。
図鑑NEO音楽の撮影では、このような大胆に修復した楽器で良いのか?と思いましたが、他収蔵楽器を見渡しても、それぞれが使い込まれた楽器たちなので、「なおしながら、大事に使われている楽器」としての存在感が愛しいカシシです。
ビリンバウ:私が20代のごく短い期間、今はなき「こどもの城」の音楽事業部で音楽アルバイトをしていた時期があり、そこでは、中学時代に憧れた「武蔵美中南米研究会」のサンバのお兄さん 渡辺亮さんとの再会もあり、その他にも民族音楽に近しいプロミュージシャンのバイト仲間との出会いに恵まれました。小澤敏也さんとは、家が近所なこともあり、音楽の兄貴的な存在として晩年にはホームページやYouTubeの管理や、私の主宰するこどもむけの音楽鑑賞教室、連名でのワークショップ(動画での紹介はでんでらキャラバン2012)などさまざまなことを伝授していただきました。写真のビリンバウは、園児のご家族がTVでみたビリンバウをみようみまねでつくられた「おもちゃビリンバウ」です。
ここで、お伝えしたいこととしては、平成(当時2011)のその頃の東京の田舎の農家なら、どの家でもひょうたんは家にあった。ということ。TVで外国の人がビリンバウを演奏してたら、庭や畑にありそうなもので手作りできたということです。
コロナ禍以降の世間の変化、農家の代替わりも進んで、今はもうミニマリストの時代。なんでもかんでも処分してしまう世の中になりました。平成は遠くなったなぁ〜とこの「おもちゃビリンバウ」をみると万感が募ります。小澤敏也さんは、このビリンバウを「ど、れ、み」の3音にひとつずつチューニングしてくれたので、私のリトミックのワークショップ、楽器体験講座などでは、大活躍をしています。
ラボには、この他にもカポエイラでも使われるシンプルな棒をその都度曲げてしつらえる「ビリンバウ」や、演奏用で弓の形に木製で楽器化されているチューニングタイプの「ビリンバウ」を所蔵して、ラボ活動の活動のひとつ(アーティストが想像活動の場として施設利用するスペースレンタル事業)としても各アーティストに活用していただいています。
エピローグ つけたしつけたし雑記
ひょうたん暦
ひょうたんを育てているヒョータニスト(ひょうたん日記には、全国のヒョータニストたちが紹介されています)にとって、1年は、ひょうたんの植え付け、摘心、収穫、水漬け…。などひょうたん暦となります。
私が指導に通っている保育園の中にも、玄関に大きなひょうたんが縁起物として飾られている園があり、伺うたびにほっこり心が和みます。お店でも「ひょうたん」が飾られているお店は、絶対に「良いお店」と思えますよね。お人柄が良いに決まってます!自然の恵みをありがたいと思える人間に私もなりたいと思いますし、目指していきたいとも願ってます。
SFひょうたん
話が跳んで恐縮なのですが、SF好きで『スターゲイト アトランティス』という米ドラマにはまってみていると、「レイス」という人類とは全く別のテクノロジーをもった種族は、メカではなく、バイオで装置をつくるハイテクを持っている設定なのです。
この「レイス」たちが、ストーリーごとに作り出す「生き物感いっぱいの装置」が、ひょうたんの内部にそっくり!この話、なかなか共感してくれる人が見つからないので、もし「おんなじこと考えた!」という方がいたら、お友達になっていただきたいです。
ひょうたんオペ
脈絡がないエピローグで恐縮なのですが、小さい千成ひょうたんは、私はハサミで切ってしまうことが多いのですが、その手際をみて他の方が真似をすると、ひょうたんが見事に真っ二つに割れてしまう。破壊されてしまうことがよくあります。ひょうたんの種は、みかんの房のようにまとまっているので、そこをうまく剥くように筋を外側から予想してハサミをいれれば、わりと綺麗に切れてくれます。
そう、感情をもって「切られてあげてもよろしくてよ。」という声に従って、メスをいれるように切っていけば、切られてくれるのが「ひょうたん」なのです。
シェケレの作り方については、ホームページに散乱しています。
私の場合、音が主役なので、ビーズの音をひとつずつパッチン、パッチンと聴きながら目数も段数もひょうたんからのレスポンスに従って、「自然の流れ」をうけとめていっています。シェケレを編む作業は、ビーズとひょうたんがぶつかる音を聴きながら、癒される時間です。1段編むごとに、逆さに吊るしてバランスを確認。それもとても楽しい作業です。
手みたいな足
私が出しているいろんな楽器づくり動画でよくいただくご質問。
「ひょうたんを持っているのは足ですか?」
足指が長いのお恥ずかしいのですが、
糸のループ作りも、シェケレ本体を編む時も、他の楽器づくりを問わず、さまざまな生活の場でも、私は人類でありながら未だ足も使用しています。
そんなわけで、今後もひょうたんを使ったいろんな音あそびを私のまわりのこどもたちとともに展開していけたらと思っています。最後までお読みいただきありがとうございました。
むらさきmusicラボでは、単発のご利用も可能ですので、実際にご自分で楽器を作ってみたい方など、ホームページリンクからのアドレスに、ご自身アドレスを添えてご連絡ください。
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