そして、最初にコンタクトをくださった「丸黄うりほ」さん【花形文化通信「ひょうたん日記」オール電化ひょうたん・ヒョウタン総合研究所etc.】とのやりとりや、昨年暮れでのプライベートセッションでの対話で、多くの瓢箪への愛と学びを得ることができました。
【これまでの私の瓢箪感】
大きく影響を受けたことがらに触れる前に、これまでの気持ちを記します。「楽器用の瓢箪」と、「自家農園で育てった園児やラボ生徒の工作のための瓢箪」は、はっきり分けて考えていました。
そして、こちらは、外部のワークショップ、音楽専門の団体様宛、またはプロミュージシャンの方が演奏としてご使用になられる「楽器」用の瓢箪で、これらは全て「ホームセンター」で調達していました。
そして、ブラジルやアフリカの楽器に造詣が深いパーカッショニストの方との共同製作作業では、アフリカのガボンで購入された楽器用のチューニングキーがあらかじめ表記されている「楽器用瓢箪」との出会いもありました。
一方、日本国内で流通している「楽器 シェケレ」は、天然の瓢箪よりもグラスファイバー製が入手しやすく、瓢箪よりは扱いが楽とはいえ、それでも割れ物、壊れ物という扱いは同様で、天井などから吊るす展示をされている様子を見かけます。その中で、たまに天然物の瓢箪にビーズやピース(木片)が施されているものには、販売しやすいような国旗柄や、簡単なビーズでの織り模様が計算されて編み込まれています。
実際に自分で編んでみてわかったことなのですが、これらの模様は、「この文様なら売れる」という販売上のねらいはもちろんあると思うのですが、シェケレを編むことで一番難しいのは、輪郭にあわせての「目数」を決めることなので、天然物である「瓢箪」をある程度規格化することで、同量のビーズ使用で、販売価格で揃えることができることから、文様についても、そのガイド役としての後付けのような推測がされます。
実際、お聞きした話では、ブラジルのシェケレのメーカーは、契約農家から納品されるシェケレ用の瓢箪の規格をもっていて、それから外れた瓢箪は製品になれない。その希少な瓢箪から製品化されたシェケレ、または、オーダーとして、「マラカトゥ・ナサオン」などのカーニバルパレード用に、受注生産されたものは、ブラジル国内で流通してしまうので、日本に輸出品として販売ルートにのってくることが少ないそうです。
また、カーニバルでの団体使用の際には、各チームごとに栽培から着手していることもあるそうで、「種」をシェアして、大事に栽培されている話も聞いたことがあります。
そんななかで、私も自然と「楽器になれるもの」「楽器ではなくて、工作に使用するもの」という意識があったのだと思います。
【2023 ひょうたんフェスティバル】
フェイスブックで私のシェケレ作品をみたことがきっかけで、SNS上で交流を深めて、とうとう昨年の暮れに、リアルでお会いできるきっかけがあり、その時に、丸黄うりほさんが、同じ品種同士の「双子」ペアの瓢箪を持ってきてくださり、私は、その片割れずつを東京に持ち帰って、シェケレにしたものを関西のヒョータニストたちにお披露目しつつ、自己紹介をしたい気持ちで、2023 ゴールディンウィーク最終日の「ひょうたんフェスティバル」(大阪)に足を運びました。
フェスティバルは、いくつかのパートに分かれていて、こちらは、冒頭の「ひょうたんみせみせ会」。このネーミングも素晴らしいですね。品評会だと、優劣、順位が生まれるけれど、「みせみせ」では、全てがポジティブ、「この子は、カビがでてこのような模様がでているけれど、かえってそれが愛おしい」などの愛のあるワードに溢れているヒョータニストたちの会話は、本当に勉強になりました。
テルミンのような電気楽器、レジンを施したランプ、笛、カズー、鍼灸の道具といった様々な用途に加工されたものもあれば、「自然のまま」乾燥させたものや、種ぬきの処理をしたものなど、どれもこれもストーリーとして、手をかけたご本人たちが熱く語れるものばかり。
そして、皆さん、その瓢箪に名前をつけて慈しんでいらっしゃいました。
その後のセクションでは、「ひょうたん栽培講座」にも参加させていただき、瓢箪がかかりやすい病気のことや、水やりのことなど、実践的なことがらを拝聴できました。
心を打たれたのは、栽培についてレクチャーをされた丸黄うりほさんの
「瓢箪が虫にくわれた痕跡は、味わい、芸術になりえるけれど、病気は怖い」という件です。
病気にひとたび罹ると、細菌が残った場合、リカバーには5年ほどかかるそう。芸術になるのか?災いになるのか?の境界線に、「時間」が深くかかわるという気づきを私に与えてくれたことは、「時間と空間」のリトミックを追求するものとして、とても勉強になりました。
【双子のひょうたちの旅】
こちらのシェケレたちは、ひょうたんフェステイバルにむけて、事前に編み進めていた「丸黄うりほさんちの双子のひょうたん」たちのシェケレ。
そして、こちらも丸黄うりほさん家出身の千成瓢箪です。ここのところの過密スケジュールで、編む時間がなかったので、大阪のホテルで4時間ほどで編みました。WSなどでは、植木プランターなどの補助台を使用しますが、ひとりで編む場合は、たいてい手足4つを同時につかって、ガンガン編んでいっています。
【私がシェケレにできることの気づき】
ちょうどのタイミングで、私が大阪に滞在しているタイミングで、パーカッショニスト八尋知洋さんが、私が製作提供をしたシェケレについての記事を投稿されていました。プロユースの場合、どのような楽器を提供したかは、その方のイメージ戦略にも関わることなので、発表のタイミングなどの詳細には、細心の注意を払っています。(詳しくは、フェイスブックのアカウントをお持ちの方は、八尋知洋さんのウォールの公開記事を辿ってくださいませ。👍高評価をお忘れなく)
ヒョターニストの方々のいろんな作品、瓢箪をみて、自分自身の「シェケレ」と「瓢箪」とで、オリジナリティを持って関われることについて、ぼんやりとホテルでひとりで瞑想にふけりました。
「シェケレは、ビーズを着替えさせることができる!」ということについては、
今のところ、自分自身の演奏上でしか実現できていないのですが、
演奏や録音の現場の音響のかえりをチェックして、TPOにあわせたビーズの服を着替えさせることを常としています。撮影は、このビーズ。演奏は、このビーズと、現場の中でもチェンジすることもあります。リスクもあり、技術がいることなので、他の方には、あまりおすすめしていません。
私が、シェケレ製作用に入手しているビーズには、1個単位で値段がついているものもあれば、グラムで買うもの、また一番お得なのは、イベントや問屋の放出品で、「アソート」(詰め合わせ)です。
根気のいる作業ですが、粒や音の具合で、自分なりの選別、小分けをしていっています。
そして、WSでは、写真のような半完成品の音の体験キットを用意しておいて、これから製作される方に、ビーズと瓢箪との音のマッチングについて体感をしていただいています。
大変難しいのですが、「好きなもの同士を組み合わせる」ことは、必ずしも良い楽器につながらないようです。
作り手が、「自分の好き」を出しすぎてしまうことよりも、1段、1弾ごとにシェケレになっていく瓢箪とビーズの相性を見極めて、寄り添いながら育てていくことを優先するようになりました。その結果、私のシェケレは、トップデザイナーや、メーカー品とは程遠い、家庭料理のような風合いのものが多いのですが、それは、自分の主張ではなく、楽器の声をヒアリングして反映した結果、おかあさん風味がでてしまうのだと、気づきました。
もうひとつの私の表現方法でもある「無声映画の楽士」を映画作品を主役とし、カツベンに足並みをあわせつつ、時代背景を担う点では、「シェケレ」と「無声映画」どちらも似ているなぁとも気づきました。
今後とも、いろんな瓢箪のことを学びつつ、自分が楽器として昇華させられることなど、深く追求していきたいと思いました。私の心よく受け入れてくださった関西のヒョータニストの皆様そして、気配りをたくさんしてくだった丸黄うりほさんに感謝いたします。