小学館図鑑NEO 音楽にも、音叉を使ったチューニング(調律)、ピッチ(Hzを用いた単位 440Hzなど)についての説明のページがあります。

むらさきmusicラボでは、「小学館図鑑NEO 音楽」 を各自持参して、テキストとして紐解きながら気づいたこと、レクチャーしたこと、関連の画像などを付箋で貼ってカスタマイズする活動を行っています。来週の単元に「チューニング」があるので、こちらはその予習として用意しました。

 

ラボの図鑑のレクチャーは、後から個別での受講できますので、ご希望の単元などは、一覧を参照してください。

むらさきmusicラボ 小学館図鑑NEO 音楽  レクチャーシリーズ T4「チューニングとグラデーション」

・調律(チューニング)とは?

・音叉を触ろう!鳴らそう!

・図鑑にある結晶のような形について

・さまざまな調律と時代によっての動き(以下は、そちらについての予習となります。ラボでのセッションは楽器を鳴らすなどの体験が中心となるため、座学については、保護者さまむけとなります。

・チューニングしてみよう!(ビリンバウ/ブラジル、ツィター/ロシア、不明、ギター、いちごいちえ、ドタール、ウクレレ)

・まり先生のオリジナルチューニング楽器シリーズのデモンストレーション(ひょうたんに紙を貼ってC4にしたもの、カシシでドレミにしたものなど)

予習篇なので、はじめてご参加の方むけに私の事情についても共有しておきますね。元幼稚園園長で、退職後には、専門のリトミックを中心に教える活動をしています。無声映画伴奏や、ブラジルパーカッションなどの演奏のほか、ものづくりが好きなので手作り楽器講座などをしているうちに、チューニングをすることで応用力がついたパーカッションがプロミュージシャンの方にも気に入っていただけるようになり、なんとなく「チューニング」についての相談を多くうけるようになりました。小学館図鑑NEOにも、ブラジルの楽器などでご協力させていただいたご縁があり、自分のラボに通う親子さんやビジターさんと一緒に、みんなで「図鑑を紐解く」活動を行っています。

 

私自身は、生まれつきと思えるほどの絶対音感キーパーなので、その便利さと不便さの中をずっと生きてきました。便利なことは、2、3回聴いただけの曲でも耳コピはほぼ無意識でできる。音叉、チューニングメーターがいらないなどの音楽面の他、昭和の頃なら、公衆電話のプッシュ音などをメロディとして覚えているので、電話番号をたくさん記憶できたこと。それくらいです。

戦前は、耳の良いこどもを集めて絶対音感教育を施し、戦闘機の音を覚えさせるという軍事目的の教育もあったようです。日本はピアノ人口が多いので世界で最も絶対音感保有者が多いと言われていますが、現在は、デジタルミュージックなどの台頭で、さまざまなチューニングが耳に溢れているので、相対音感保持者の方が多くなった印象です。

(こちらは予習ページなので、絶対音感、相対音感については、ラボのT4チューニングのセッションで詳しく説明しますね)

ユニバーサル標準の440Hzの基準で、暗算名人が頭の中にそろばんが浮かぶのと同じように、頭の中に440Hzの鍵盤がいつでも自由に使えるイメージです。私は音色のニュアンスにも、色を感じる「共感覚」もあるので、実は、「音」に関して、食物アレルギーのような「不快感」を音の影響で感じることは、不便なことです。場合によっては、家族などまわりの人に、BGMをとめてもらったり、その場から離れること許してもらうこともあります。

私の場合、440Hz以外は受け入れられないのではなく、聴衆として海外オーケストラを442Hzでホールで聞いたり、大編成のJAZZバンドを441Hzも聴きます。バンド演奏時は、メンバーのピッチでも、弦の方が442Hzをリクエストされて皆であわせた経験もしています。古楽ではもともとモダンとチューニングが低めに異なるので、メンバーに古楽器がいる場合には、一番、調律が難しい楽器にあわせて、お互いに歩み寄るようなやりとりをしています。ピッチについて、どれが優秀とか、順位があるのではなく適材適所を標準を定めた上で協議をするというのが現在の実情と理解しています。

調律ピッチについては、時代とともに移り変わりがあるそうです。現在の国際標準440Hz(ユニバーサルピッチ)は、1939年ロンドンで設定されたそうで、まさに無声映画の時代は、この440Hzピッチで、チャップリン、キートンの映画ピアノ伴奏は行われていたと思われます。昔懐かしいNHKの時報、「ぴ・ぴ・ぴ・ぴーん」のラの音が440Hzです。

私は、無声映画の活弁伴奏を持ち込みのシンセサイザーで、古い時代のホンキートンクピアノなどの音色で演奏することが好きです。鍵盤も軽いので、無声映画時代のラグタイムなどをスライドピアノ技法で弾くのも楽ですし、ピッチも自分が普段使っている440Hzだからです。外部の生ピアノをお借りする場合は、鍵盤が固い場合や、ピッチが442Hzのこともあるので注意が必要なのですね。ここのあたりは、勉強中の身です。

ここで、その他のピッチの紹介をしますね。わかりやすいように、「ラ=A」の音が低い順に並べてみます。

【415Hz バロックピッチ】

古楽器のアンサンブルでは、415Hzのバロックピッチという文も検索するとでてきますが、現代の私のまわりのミュージシャンの感覚だと、おおよそ420Hz界隈で、一番、調律しずらい楽器にあわせて柔軟に対応しているように見受けられます。中世フィドル、プサルテリーなどは、その都度、調弦できますが、足踏みオルガン、ポルタティーフオルガンなどがある場合は、大変ですものね。そんな時、みんなで調律を塩梅しあうというような意味で「自然に」「自然律で」と言い回しをしている方もいます。

ピアノコンクールでも「ピリオド楽器」の部門があって、その場合は、ピッチは「ピリオド楽器」時代のものにするという記事をみました。

【430Hz クラシカルピッチ 】

ピアノの詩人と言われたショパン、神童モーツァルト、超絶技巧のリストなど、ピアノの全盛期は、430Hz(クラシカルピッチ)と言われています。

 

【440Hz ユニバーサルピッチ】

国際的にピッチが調律されたのは、クラシックや、当時のポピュラーなどの調性音楽(ハ長調などの音階(スケール)をルールとした音楽)の構成和音となる「主和音I、属和音V、下属和音IV」が、調和して美しく響きます。黒い紙の上に塩をおいて振動させてもある程度は、美しく文様がでるような身体にもある程度はやさしい調和があることです。

私は、小さいこどもと一緒に歌をうたう保育施設では、ぜひ440Hzにしてもらいたいと思っています。心の安定、安らぎを感じるような「ピアノの音色」を幼少期に覚えてほしいからです。また、ピアノのお教室でも、バイエルからショパン、印象派くらいの時代作品を中心とされているのならば、作品が作られた時代に近い440Hzの世界観を教えてあげてほしいと思います。ドビュッシーのキラキラとした夢の空間のようなピアノ描写などは、やはり440Hzならでは!その曲が作られた時代のピアノで再現できることは、演奏者にとっては喜びだと思っています。

『余談』 癒し、身体に優しいピッチを極めるのならば、もっと身体にやさしいとされる「ヒーリング調律」もあり、それ用の音叉もあって、治療や療法にも音の振動は活用されています。調べるといろいろ検索できるので「ラ」を基調とした演奏用の事柄ではないのでこちらではご紹介しませんが、ラボには地球のサイズから割り出したというヒーリング用の音叉や、440Hzの共鳴箱付きの音叉も2つ、そしてC4音叉など、いろいろ「音実験」ができる楽器、グッズが揃っております。


【441Hz】

英語圏では、まず440Hzということなのですが、ジャズなど、セブンス、イレブンスなどのテンションコードが豊富なジャズシーンでは、そのような和音をブラスで共鳴させる都合上、441Hzにあわせたい場合があるようです。ただ、この場合、ボーカリストにとってはより高い声が出せるか?という切実な問題がでてくるので、いろいろとミュージシャン裏話はつきません。

【442Hz】作曲された年代や曲風にもよりますが、管弦打が一体となったような大きなボリュームが強調され、華やかで煌びやかな高揚感も得られます。ドイツ語圏のオーケストラでは、442Hzを主流とすることから、国内でも、海外のオーケストラを受け入れる都合上、大ホールではその都度の調律という手間を省くために、公共442Hzに統一しようという動きもある様です。そのホールのピアノのデフォルトが442Hzの場合、演奏者が440Hzで事前調律をした場合、演奏終了後には、442Hzに戻す手続きが必要な場合もあるそうです。

ピアノコンクールの会場となる大きな公共ホールが442Hzピアノの場合、ピアノコンクールに出場させるピアノ教室や、出場者のご家庭も442Hzにする場合もあるようです。ピアノ本体の負担、ハイピッチに耐えられる比較的新しいピアノで、なおかつ低音部分がまっすぐな大型のピアノが良いと思うのですが、調律師さんと相談をした方が良いでしょう。中古市場にでているピアノなど、年式の古いピアノは、そもそもユニバーサル調律440Hzで出荷されており、ピッチをあげるというのは、ギターの弦のように張りを強くするので、負担がかかります。デジタルのように、簡単にあげたり下げたりできるのではなく、楽器の負担度でいえば、ダイエットに近いかもしれません。

公共ホールにあるような長いコンサートピアノは、「フルコンサート」といって、低音部の弦がまっすぐ張られています。(ラボのピアノは、元公共ホールのピアノでYAMAHA G7 低音の倍音、すごく良い自慢のピアノです。)家庭の狭いスペースでもグランドピアノを置きたい場合、低音部の弦を曲げて張ることになります。公共ホールのピアノは、倉庫からステージに移動する間にも調律が必須になるという前提で料金設定がされているはずです。家庭のピアノを440と442に頻繁にピッチチェンジをするのは、負担かと思いますが、このような大きな低音部弦のスペースがあるホールピアノにおいては、ピッチのチェンジができないということはないように想像します。調律毎に、調律料金はかかるでしょう。

【整音】

単にピアノに華やかさを求めるだけのためにピッチを422Hzにするという決断をする前に、ピアノのメンテナンスには、「調律」のほかに「整音」や、「クリーニング」という手段もあることも、ここでお伝えしたいと思います。音が曇っているように感じられた時には、弦のまわりが汚れていることもありますし、鍵盤の高さが揃っていない弾き辛さは、「調律」という弦のメンテナンスで修復できるものではないと思います。私の実家には、グランドピアノが3台あったのですが、すべてお一人の女性調律師のパイオニアの方が担当してくださっていて、記憶に残っているのは、「ハガキ」を所望されて、それで何かをぴったりに整えられたことがありました。幼稚園時代には、卒業生のお母様に調律をお願いし、ラボになってからは、また別の同じ女性調律師に毎年お願いしています。

ご自宅のピアノの年式や、前に調律した年月日がわからない場合は、蓋をあけると図書カードのような紙が入っている透明ケースがありますので、そちらをみると調律師さんがその都度書いてくださる「カルテ」のような手書き情報をみることができます。

私は、調律の情報がない現場でピアノを弾く場合は、ドライタイプのクイックルワイパーなどを持参して、弦の埃だけでもとるようにしています。

【アプライト グランド】

聞いた話なのですが、市井のピアノ教室では、「アプライトピアノ」と「グランドピアノ」でお月謝の料金が異なるなど、グランドピアノの方がランクが上のような考え方もある様子です。アプライトピアノと、グランドピアノは弦の張り方が異なる全く別の楽器という認識を前提に、例えば「トリル」という細かい奏法を例にとると、弦が戻るスピードが、アプライトだとこれくらい、グランドだとこれくらいというようなご自身の練習の中でのデータがとれると思います。

高級品のアプライトピアノの方が、庶民的なグランドピアノより値段は高いこともあります。私の好みとしては、小さくすることで弦を複雑に張っているミニグランドピアノよりは、大型のアプライトピアノの方が楽器に無理がない分、頼もしい気もします。

ストリートピアノを提供している受注生産の新規メーカー「遠州楽器制作」

の新しい試みにも注目しています。それぞれ、弾き手が自分の耳で感じて、家族のようにピアノを迎えられると良いですね。

【デジタル調律】

小学館図鑑NEOでは、「電気で動く楽器」と「従来の楽器」をまったく別の楽器と仕分けているところも大好きな点です。ギターとエレクトリックギターは、全く別もの。同じように、ピアノとデジタルピアノは、調律の意味も仕方も全く異なります。弦を調節して、空気の振動数を変えるピアノ調律。設定を操作するデジタルのチューニング設定を同じように考えることができないということを、この図鑑をみながら生徒に教えることができて、本当に良かったと思っています。

デジタル楽器やDTM(PCによるデスクトップミュージック)なら調律は簡単です。ただ、その簡単さゆえに、ご自身で作成される音楽と生楽器がアンサンブルする時のことを想像をしてみたり、ピッチを設定する時に、例えば「ショパン風の動画BGM フリー素材」を作成されるのなら、ピッチは440の方が良いですよね。ピッチだけではなく、デジタルな曲の作り方では、音符があまり等間隔になりすぎないように、「クオンタイズ」を少しずらすなどのテクニックもあるようです。ラボでは、iMac ガレージバンドを使ってお子様むけの簡単なDTM講座も行っています。

 

【絶対音感教育 分離唱】
私自身は、幼少期に佐々木基之先生系列の「分離唱」という絶対音感教育を受けて育ちました。私は、祖母、両親ともに国立音大卒の音楽一家だったのですが、明治生まれの祖母はともかく、音楽II世である母は「絶対音感の音楽家としての優位」について、生まれついての私の宙ぶらりんな絶対音感をツールとして役にたつものにする教育を熱心に送り出してくれました。佐々木基之先生の著書には「耳をひらく」という名著もあります。私も、忘れた頃に、たまに「佐々木メソードの生き証人」のような取材をうけることもあります。ラボでも、ニーズがあれば、後進に指導をしていきたいと思っているコンテンツです。

【むらさきmusicラボ ピッチのガイドライン】

調律について検索をしていくと、黒い紙の上に塩をおいて、特定のHzで振動させて、雪の結晶のような波動を目で見るもののみかけます。ヒーリング系のものもありますが、長年、こどもたちと接していて、やはり音楽は「薬」にもなるものだな〜と感じることも多々ありました。

幼稚園時代、お弁当の歌を歌う直前に、「静かな沈黙」の時間を設けていました。

【悲愴ソナタ 2楽章/Sonate pathétique 2mov.】ベートーヴェン

おしゃべりをせず、ただピアノの音に耳を傾ける時間を短時間でも持つことで、こどもたちの気持ちのチューニングが整ってきます。気持ちがひとつになったところで、お弁当の歌と、「おとうさま おかあさま おいしいおべんとうを〜の感謝の言葉」を唱える毎日のルーティーンが、私は本当に好きでした。

幼稚園の活動には、お辞儀、起立。さまざまな場面で「カデンツ」の和音が響いています。音による心の調律をその都度、おこなっていたような感覚があります。

私自身の考えとしては、バイエルや、こどもの初歩の音楽、モーツァルト、ベートーベンなどのソナタの演奏を学ぶのには、440Hzが最適だと思っています。それぞれの音楽がつくられたピッチで演奏するからこそ、良さがわかるというのが本音です。

442Hzを使用するそれぞれの理由もあると思います。また、440に届かないピリオド楽器、古楽器と向き合うこともあります。お互いを知って、何を優先させるのか?を知るためには、それぞれの理由を知る必要があると思います。このページに辿り着かれた音楽が好きな方には、「今は442Hzが主流だから」というのは、「理由」には当てはまらないなぁ〜、と共感していただくことができたら幸いです。

 

むらさきmusicラボのメインピッチは、国際ユニバーサル基準の440Hzです。

手作り楽器のオーダー(カシシ、シェケレ)についてのチューニングは、C4などをある程度、こちらのガイドラインでチューニングが可能です。私は、チューナーを使用せずに自分の耳で打楽器のチューニングも行いますので、442Hzなどで自作の楽器のチューニングはできません。

鍵盤奏者として出張先、外部公演で会場のピアノを演奏する場合は、主催者様の意向に従います。通常の演奏前の調律で、可能な場合は440をリクエストさせていただきます。ピアノ返却時にコストがかかる場合など、主催者様のご負担になる場合には、442Hzなどご指定のピッチで演奏をいたしますが、演奏においてテンションコードを多めに入れるなどの工夫をするため、少し時代性を忠実というラインからは外れてしまうことをご承知おきください。