上記上映イベント「戦艦ポチョムキン 」説明予定でした坂本頼光弁士がマツダ映画社、坂本頼光弁士Twitterなどでご案内した健康上の理由により、片岡一郎弁士が急遽代演してくださることとなりました。おかげさまさまで無事に終映することができました。

また、近々のロシア・ウクライナ事情の影響で、「戦艦ポチョムキン 」および重要な舞台であるオデッサの階段(ウクライナ)の歴史的な背景、そして今おきている映画の再現のような出来事もあって、本上映は本当にたくさんの反響をいただきました。楽士としての私の活動に興味を持たれて、こちらのHPに初めてたどりつかれる方もいらっしゃると思いますので、楽器のことなど後記として少し付け足す形で投稿させていただきます。

楽士とは?私の主観ですが、弁士付きの無声映画上映の時に、弁士に対して、楽士という表現が一番しっくりいくと思っています。

無声映画では、ピアニストのみ、またはオーケストラなど音楽のみの伴奏が世界的にはスタンダードで、弁士は日本独自の文化といわれています。詳しくは「カツベン」で検索をおねがいいたします。

私は、主に今はマツダ映画社にお声がけいただいて、弁士の伴奏をする楽士です。ひとりオーケストラと呼んでいただくこともあるのは、キーボード(ローランドJUNO-DS シンセサイザー)でオーケストラ音色をはじめ、爆発音や犬のなき声なども組み合わせてプログラムを事前にしています。フィルム上映が多いので、打ち込みはほとんど使わずに、生演奏をしています。左手と右手が違う音がすることもありますが、それもプログラムしています。今回は、ポチョムキンで警笛をリアルで吹きましたが、ミュージシャンとしては、パーカッショニスト でもあるので、打楽器や鳥笛などを無声映画で使用することもあります。詳しくは、本ホームページのアーカイブにも掲載があります。2016年のデビュー後、おおよそ100作品ほどを担当しました。

【機材と準備について】

2/27当日、会場にはキーボード本体と衣装など身の回りのもの、そしてダブルヘッダー夜の部で必要なパーカッションなどの大荷物をガラガラ引きずって会場入りしました。

当日の機材などは自力で運んだものの他、荷物は3分割で現場にそれぞれ到着します。

クロネコ便では自宅から配送したスピーカーやケーブル。

マツダ映画社には、あらかじめ楽器ケース、予備ケーブル、予備アダプター、予備ペダル、予備スピーカーケーブルなども預かっていただいています。

電気楽器は、ひとつでもケーブル断線してしまうと、もうそれだけで音が出ません。すべての線に関して保険をかけています。キーボード本体についても、「JUNO-DS」にしているのは、いざとなったらAmazonなどで電話1本で購入することができるフラグシップモデルだからです。音色プログラムデータも、保険としてUSBに書き出して持ち歩いています。

おなじ無声映画楽士でも、ピアノ奏者の方は、衣装カバンひとつで会場入りされていたり、いざという時には本番直前で会場入りしてもセーフ!という荒技も使えて、楽器によって違うなぁ〜と思います。バイオリンやギターなど生楽器の方々も移動の荷物は大変そうですよね。予備のギターなどを持参されることもあるでしょう。演奏家はみんな大変です。

全体の音楽は、骨組みはなるべく時代背景に沿った作曲家や民族音楽のモチーフを使用しています。繋ぎやモチーフに相応するものがないものは、オリジナル曲を使用しています。使用楽曲には著作権の問題をクリアしないといけないので、気に入った曲の作曲者の没年に70を足す計算をいつもしている感があります。

スクリーン練習はある程度、止まらずに通し練習ができるようになってからなので、制作期間中はずっとリビングの端っこのママコーナーで、ひたすらキーボードの音色をいじっていて、まるでピノキオ のゼペット爺さんみたいなコツコツ作業を夕食の後片付け後の自由時間に費やしている感じです。

私が楽士として、一番大切にしているのは、大きなスクリーンでの通し練習です。これを真っ暗闇で手元あかりは、音色ボタンのみを照らして演奏できるように練習を積み重ねます。

リトミックの先生でもあるので、効果音も映像にぴったり合わせられるようになるまで根性、根性で何回も練り直します。映像のタイミングはすべて記憶し、モチーフは暗譜、その他弁士のタイミングにあわせる必要のあるものは、即興演奏です。

弁士さんは、多くの場合、ギリギリまで台本を手直しをしているので、台本の事前確認、リハーサルもないことの方が多いです。ちなみに、昨日は全部、ぶっつけ本番です。台本の内容は、弾きながらはじめてわかることもあります。

写真:ちょうど、今ラボでは、発表会収録中なので、赤いカーテン背景もしつらえています。

キーボードは同じものを2機所有していて、状況によって、1台をマツダ映画社に預けっぱなしにしていたり、ラボと自宅と1台ずつ置いてセッティングの手間を省いたりしています。USBで同期は数秒で完了できます。

 

【映画の時代背景、民族、国風に寄り添ったモチーフの紹介】

=戦艦ポチョムキン=
・テーマモチーフ『ツァラトゥストラは如く語りき』
・『コロブチカ』最下層の船員たちの小さな反抗、ハンスト
・『カルミナ・ブラーナ:おお,運命の女神よ』
・『アンダンティーノ ハチャトリアン』ピアノ音色→オケ音色
・『リスト /パガニーニ大練習曲」より第6曲主題と変奏』
・『リムスキー・コルサレフ 「シェエラザード」第1楽章 海とシンドバッドの船』の連打の部分のみ
・『ムソルグスキー: 組曲「展覧会の絵」:バーバ・ヤガの小屋』
ちなみにバーバ・ヤガはスラブのお化け
・『展覧会の絵 プロムナード』
・『チャイコフスキー 1812』
・『チャイコフスキー セレナーデ』
・『セビリアの理髪師』
・『展覧会の絵 キエフの門』

印象的な音色にもご質問をいただきました。

ポチョムキンの反乱前は、ロシアのギター似の楽器「ブズーキ」。

そして、反乱後は、ウクライナの民族楽器「パンドゥーラ」に似ている音色を組み合わせました。

パンドゥーラは、日本在住のウクライナ人歌手ナターシャ・グジーさんの弾き語りのライブを拝見して、心に刻みました。サスティンの残し方が、スラブらしい独特な味のある楽器で大好きです。

他、印象強めの民衆の歌テーマや軍艦生活の中のそれらしい曲などはオリジナル多数なのですが、「ゲルニカ」の上野耕路さんの影響も多々うけています。

「オデッサの階段」後、戦艦ポチョムキン が応戦する時の曲が「キエフの門」というのは、私的にははまったと思っています。

=カリガリ博士=

・ オープニング正気狂気との対比のテーマ 『Brahms, Johannes: symphony No. 3 in F op. 90, 3rd movement, 1st theme』
・『Styx/Mr.robot』著作権内なのでアレンジして
『Faure/Requiem KYRIE』
・『Satie/本日休演 シネマ』より後半の1フレーズ
・カリガリ博士のテーマ Bartók:Mikrokosmos No.153
・『バッハ/プレリュード』ハ短調

ドイツの表現主義の代表的な作曲家は「シェーンベルク」なので、それは全体像になんとなくそんな感じの超調性な感じにしています。

わかりやすいカリガリ博士のパーソナルテーマは、ドイツ人でなくハンガリー人なのですが、表現主義の影響を受けた「バルトーク」にしました。「ミクロコスモス」は、バイエルのような練習曲集で、153番は、ブルガリアのリズムから、3+3+2の変拍子を練習する曲です。良い曲なので、ピアノの発表会などで、よくお子さんが弾いたりする人気曲です。

他、メロディアスな曲フレーズなどは「オペラの怪人」の上映時につくったオリジナル曲たちです。

ハチャトリアンの「アンダンティーノ」は、「イントレランス 」でも不寛容のテーマとして多数変奏して使用させてもらっています。名曲です。ご質問もいただきました。

=まり先生 笙の音色に迷走するの巻=

「嗚呼牧野先生」の私のなんちゃって「雅楽」には、いろいろと迷走した日々のストーリーがあります。

もう、一時は、笙の中古を探したり、ピアニカに似ている「アンデス」を分解して必要な音だけをストロー みたいにまとめてDIYしようかと彷徨っていました。

雅楽の部分は、左手はずっとギターでいうところの「ワウ」スイッチみたいなのがキーボードについているので、それでふわんふわんさせていました。不安定な音色をモダン楽器で出すのは難しいです。

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【大好きキャラクター チェザーレ】

チェザーレのネット検索画像

無声映画上映前は、ほぼ1ヶ月間、毎日同じ作品の演奏を稽古しています。上映後は、好きなキャラクターのロス状態になるくらいです。今回の3作品の中では、「カリガリ博士」の「チェザーレ」が推しでした!なので、髪型をお揃いにするために、大胆にヘアカットを施しました。

「戦艦ポチョムキン を代演してくださった片岡一郎弁士とチェザーレの移動ポーズ」撮影 黒沢孝行(ほにゃ〜)氏

「寄席手引」

など、おもしろさとわかりやすさを両立した本でお馴染みの粋人の青木氏とは、18歳音大1年生時、今は「東京スカパラダイスオーケストラ」になった方々や「SAITAMIGOS サイタミーゴス」の人など、青木氏が人を引き寄せて集まって、ワイワイ音楽をやっていた頃の仲間で今では、奥様の漫画家尾形未紀さんとともにご夫婦ともに仲良くさせていただいています。チェザーレのポーズにも、お付き合いいただきました。撮影 山城秀之弁士

衣装も、「表現主義」「キュービズム」「幾何学」っぽいものを中国の通販で買いました。

チェザーレ、もう、全部可愛い❤️ 私の好みのドストライクの大型犬のような男子がいろんなキュートな表情をみせてくれます。一番の萌えポイントは、ラストの混沌としたいろんな狂気が混ざり合うシーンで、生き返ったのか死ななかったか?のチェザーレが花を一輪持って佇んでいるシーン。痺れました。

そんなチェザーレへの推しの気持ちがあり、髪型を久しぶりにショートにしました。ラボのママの記憶では、2017年の2月以来だそうです。

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以下は告知情報です。

第763回無声映画鑑賞会

[映画史上の傑作選]
2月27日(日曜)午後2時開演 (午後1時30分開場・終映予定4時30分)
★上映作品
『カリガリ博士』Das Kabinett des Dr.Caligari(15:35~)
1916年 独 デグラ=ビオスコープ作品 (50分)
監督/ロベルト・ヴィーネ
出演/ヴェルナー・クラウス、コンラート・ファイト、リル・ダゴファー
弁士/澤登 翠
『戦艦ポチョムキン』Bronenosets“Potyomkin”(14:25~)
1925年 露 ゴスキノ作品 (55分)
監督・脚本/セルゲイ・エイゼンシュテイン
出演/アレクサンドル・アントーノフ、ウラディミール・バルスキー
弁士/坂本頼光.  
代演弁士/片岡一郎
併映
牧野省三葬儀の実写
『噫々牧野省三先生』(14:00~)
昭和4(1929)年 マキノ・プロダクション作品 (17分)
弁士:樗澤賢一
演奏/
坂本真理
会場/
江東区 古石場文化センター
     江東区古石場2-13-2  電話 03-5620-0224
(東京メトロ東西線「門前仲町駅」2番出口より徒歩10分)
料金/
一般2000円 学生1600円 前売、電話&E-mail予約1500円
子供(中学生以下)1000円 会員優待券1000円
電話&E-mail予約は公演前日の午後6時まで受け付けます。
(但し、規定枚数に達した場合はその時点で受付を終了致します。)
■予約・お問合せ
江東区古石場文化センター
電話 03-5620-02224
無声映画鑑賞会事務局
電話 03-3605-9981 (受付時間 平日の午前10時~午後6時)
FAX 03-3605-9982
E-mail: katsuben@matsudafilm.com
※E-mail予約の場合は、「○月○日無声映画鑑賞会前売予約」、枚数、代表者のお名前を明記して、メールをお送り下さい。
E-mailにて御予約いただいた方には[予約確認]のメールをお送りしています。