コラム「楽器づくりから学ぶ脳の使い方」

 種類ごとにトレーに仕分けられた沢山のパーツや鈴を選んで、基盤となる板や缶、箱にとりつけて楽器づくりの実験をする。このコンセプトは「オリジナル~」というタイトルとともに、2017年から3年間継続した「渋谷ズンチャカ TBSハウジング協賛ワークショップ」にて、協賛のTBSの現役お受験ママで教育分野のマーケティング調査などを手掛けてきた敏腕チーフ率いる優秀なチームの皆さんと協議を重ねて土台をつくってきたノウハウを継承しているものです。

 企業イメージアップのためイベントに参加費無料(ひとりあたり¥2500の材料費を企業が負担)のため大好評!私もいろんな学びとともに、「いろんな人」にも遭いました。そして、その場その場での「グランドルール」に適応できる人もいれば、自分の都合の良い「マイルール」を常識として主張する人もいますよね。そして、それは幼少期からの経験値で教育で対処すべきと思ったのです。保育園では2021年から継続して実施している「オリジナル」「実験」ですが、いろんな気づきがありました。

「えっ?だって『食べ放題なんでしょ』」

企業協賛ではなく保育園実施では、私の当日の指導費の中から消耗品代等をなんとか¥5000に納めるため、楽器はひと月レンタルとして解体後、再利用可能なパーツは次年度用にストック。園によって、3人でひとつの楽器を組み立てたり、選べるパーツの数を口頭で説明して「グランドルール」としています。

 そんななか、ある日、年少児初参加のA君。どこから持ってきたか大きな皿の上に、てんこ盛りの鈴やミニシンバルなど、1グループに1個ランクのスペシャルパーツばかり集めてニッコニコ。しかもグループではなく、単独行動!さっき説明したばかりの「グランドルール」を繰り返しますが、「違うよ!」と否定されるので理由を尋ねると、「食べ放題だから」という彼の中の数年の人生経験で得た「ぼくの常識」があったことを理解しました。ことばがけをし、周りの子たちの行動を一緒に観察しつつ、改めてその場所ごとにルールは異なるという「世の中」について触れるところまで見届けました。

私が園長をしていた幼稚園では、楽器づくりは材料集めからご家庭とともに進めていく「ひとり1個、持ち帰り」のプロジェクトでしたが、保育園では月1回のリトミックの範疇となるので歯がゆいところですが、それでもこのような経験はゼロよりは、経験させてあげたいところですよね。

 脳の成長を語る際に、経験格差は欠かせません。テーマパークに連れていく行動力は立派ですが、一方で、図鑑などで気になった動植物に興味を持ち、親がそれがどこに行けば体験できるか尽力し、共に足を運ぶような体験もあわせてみると、その過程でたくさんの話し合いも生まれ家族にとってのプロジェクトに育っていくでしょう。将来、そのように自分の興味を仕事にできる力を育てるチャンスでもあると思います。

 私も息子の「汽水」への興味のため、いろいろ付き合い経験させてもらいました。

同じ様に現在「むらさきmusicラボ」には、いろんなピンポイントな楽器への興味を持った親子さんが夏休み時期にはビジター受講されています。

まずは、「何に興味を持つか?」なのですが、それは、そもそも「何に興味を持っても否定されない」親子の会話力からスタートなんだ!長年、教師をやってきて、成長とともに目的をもった行動をする人は、いろんな興味、物事の面白さについて家族で会話をしていることを感じています。

「お金の話を怖がらないで」受益者負担とオールインクルーシブ

私の拠点「むらさきmusicラボ」では、毎学期末に、小学生「勝手にランチ会」を実施していて、いわば「オリジナル〇〇実験室」のランチver.でこどもたちのリクエストを聞きつつ、私が食材を予算内で集めて並べておいて、それぞれ数量制限を設けつつもかなりフリーなオリジナルランチを作って食べることを楽しみにしている様子です。この場は「被災し小学校避難所で配給」も疑似体験としているので、配給されたパンを手づかみで自分のミスで落とした場合には代替えパンは与えないルール。落とした子は自分で考えて、オーブンで熱して食べていました。

「パン屋さんだったら、すぐに代わりのパンをとっていいって言うよ」

「自分のミスで落としちゃっても?」

それは、誰かが落としてしまうパンの分も、全体の値段に反映されているから。食べ放題だって、カラクリがある!お店が材料費で損をしたら、家賃や人件費が賄えないからね!そんな意味で「量り売りのお店」のシステムは必要な分だけ。誰かが落としてダメになってしまうパンの値段を負担しないシステムは、「受益者負担」なので、ラボの楽器づくりワークショップは基本、パーツはこのシステムです。

失敗を恐れないために小さい失敗とそのフォローを経験する

ラボでは、張り紙はひとつもないのですが、細かいルールがたくさんあり、例えば、工作でごく少量の丸を切りたい時に、経験の浅い子は、大きな紙の真ん中に丸を切って「綺麗に切れた!」とご満悦なところ、そんな時には、小さく切った「リユース紙」のコーナーから使ってくれると助かることをすぐに伝えます。巷のワークショップでは、そのような無駄を防ぐために、あらかじめ必要なものを準備された「キット」になっているし、保育内でもパーツを用意することはよくあります。誰かに倉庫から出してもらって、お膳立てをしてもらって片付けてもらう「手ぶら体験」はお得かもしれないけれど、脳の経験値をあげるためには、いろんな失敗とそれらをフォローされる経験が必要だと思っています。片付けは、後始末ではなく、次の機会のための準備だと思えるような言葉がけが有効です。「散らかしたんだから、以前の状態に戻して」というミッション、コマンドだと、「以前の状態」を覚えていない子には心が苦しいし、散らかすくらいならと、ゲームなど散らからない遊びを選択する子もでてきます。「おやつが提供できるレベルにここの空間をあけてほしい」「ここのおもちゃ、誰が使っていたか見てた人?」という声かけが有効でした。

失敗に対して感情的に叱ってしまうと、失敗が怖いあまりチャレンジをしない子に育ってしまうでしょう。失敗を許す関係性をお互いに認識した上で、保育園でも限られた経済圏と持ち時間で、「オリジナル」「実験」を経験させてあげたいと思っています。

 各園の先生方も楽器づくりの基礎知識のための8月のラボ研修に参加をしてくださったり、空き缶や箱などの素材集めをご自宅でも気遣っていただいています。

 「楽器づくり」体験の話がご家庭でも溢れたら、それは脳成長のチャンス!楽器の音色は科学でもありますので、いろんな音を発掘してくださいね!