2024年12月15日 澄みわたる晴天の中、無事に終映いたしました。昨年同様、任井田地域の皆様の心尽くしの手づくりの昼食に舌鼓。私は今年は調子にのって、汁物と漬物をおかわりをご所望してしました。美味しい!美味しい!それもそのはず!お味噌も、白菜もスタッフの方(それぞれ管理職)のご自宅の味を提供してくださったとのこと!感激した気持ちのまま、美しい本番上映を迎えることができました。

大奮闘!SE体験の中学生ボランティア爆誕!

SE(効果音)体験へのよびかけ

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SE体験者募集の巻

公演を終えて、弁士や作品の素晴らしさについては、巻末やSNSにて別に発信させていただこうと思いますが、こちらではまず、昨日参加をしてくださった中学生ボランティア SE体験について、ご参加を後押ししてくださった地域のみなさんやご家族にむけて詳しく補足のレポートをさせていただこうと思います。

前回の公演でも中学生ボランティアのみなさんとは、楽器を運んでいただいたり、リクエストでJ-POPなどを即興リクエスト演奏に応えさせていただいたりというようなミニ交流があったのですが、今回は縁があって、中学生ボランティアさんにSE体験をしていただくことになり、普段の業務ではいろんな「楽器体験」的なワークショップを行なっている私ですが、「無声映画楽士」としては、今回はじめて、このような「募集!」についての思いをひとつの紙にまとめさせていただきました。

地域のご担当のスタッフの皆様が上手に伝えてくださったおかげさまで、希望者の中から各学年ごと、3名の方が担当されることとなり、本番までの2回の活動日にむけて、私もテキストと、全体の進行図、そして、動画の3点のアイテムを準備させていただきました。

さぁ!SEの練習をしてみよう!

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練習用のテキスト

中学生ボランティアの練習日にあわせて、当日に使用する楽器も公演に先駆けて、配送させていただきました。
SE楽器には、大きくわけて2種類と考えていただいて、ひとつは、「木魚」「おりん」などの市販されている「楽器らしい」楽器。
もうひとつは、「SE用として用いられる楽器」で、オーケストラなどで使われる用に楽器メーカーが製作をしていたり、私のように手づくりでつくる場合もあります。

のnoteの巻末でブラジルの「サウンドスケープ」(自然の状況などを楽器を使って表現をするアーティスト活動)についてご紹介しましたが、パーカッショニストたちは、様々なモノを使って、いろんな音の可能性を追求していて、むらさきmusicラボに「新しい楽器の発明」の相談にご来館いただくことがあり、その副産物的な二次的創造として、こんな「楽器づくり講座」も各地で展開してきました。

サウンドスケープ手づくり楽器について

初回練習にむけての3つのポイント

この時点(はじめての練習)で集まるSE体験メンバーに一番お伝えしたいポイントは、以下の3つです。
・叩く楽器には専用のバチを使おう!
「おりん」には、専用の「すりこぎ」に似た棒、「木魚」には、棒にしなりのある細い棒をつかった棒が付帯しています。叩くものはなんでも良いのではない!ということをここで体験して覚えていただけると嬉しいと思いました。

・他のシーンで、楽器が共鳴して勝手に鳴る場合があるので気をつけましょう。
音は空気を通した振動で伝わるのですが、大きなホールは音響設計がされていますので、家具や雑貨が置かれている室内とは異なった現象がおきる可能性があります。特に「銅鑼」など金属製の楽器は、共鳴をしてしまう可能性があるので、楽器と同胞した「楽器用の座布団」など、指定の置き場所に戻すことを心がけましょう。音を発する必要がない他のシーンで鳴ってはいけない音は鳴らさせない、です。

・棒を置いたりする時に、コツンという音をマイクが拾ってしまう場合があります。静かに置くか、タオルのようなものを敷いても良いと思います。
私のリクエストにスタッフの方がきめ細かく応えてくださり、また、後でリクエストをした中学生さんおひとりずつ担当別に分ける「トートバック」までご準備いただき、素晴らしい対応をしていただきました。このような事前準備が、楽士の活動に限らず、「映画」は一度、再生をしてしまうと止まることもありませんので、本当に大事なことなのだと日々痛感しています。

動画でお手本をみよう!(1)スラップティック

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お手本用の動画「もちつき」

映画も音も時間で進んでいくことがらなので、やはり「動画」で説明する方がわかりやすいかと、スマホの動画制作アプリのオーバーダブ機能や字幕をつかって、「映像テキスト」もそれぞれの箇所ごとに作成しました。
「もちつき」には、自作の「スラップスティック」を持参しました。「スラップスティック」は、映画や映画音楽のオーケストラ演奏で使われる楽器名で、「馬を走らせる鞭」の音がする楽器の名前です。私の自作楽器は、少し工夫をしていて、蝶番をつかわずに、しなりのある板を打ち付ける操作にしています。

動画のタイムラインに沿って、スタートと音を終了させるタイミングをバッチリ事前に把握をしていただいていました。

動画でお手本をみよう!(2)レインスティック

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お手本用の動画「レインスティック」

よかったら本物の楽器のレインスティックを参考動画として、私の演奏をご覧ください。ペルー産のサボテンを使った楽器です。私は、これをラップの芯などの廃材で作るのが得意で、国立映画アーカイブの展示コーナーなど、いろんなところで人気を博しています。ラップの芯についているイボイボは、爪楊枝を切った先端で、中身は螺旋階段のように、緻密に中のビーズが落ちていくのに、パチンコ玉のように、いちいち干渉しあって音がでる仕組みになっていて、両端にザラザラとして、音の伝承性の良い「ヘッド」をドラムヘッドチューニングの順通りに対角同士でピンと貼っていったものです。梱包を解く際に生じたダメージの補修用の予備として、あとから2本短い「レインスティック」も持参したので、当日は、A担当の方のみならず、結果的に全員でこの海の波の音を表現してもらうことができました。

いざ当日!本番直前 

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当日のステージリハーサル

須賀川市文化センター大ホールは、客席数 1,070席(固定席)身障者席 4席のピカピカの大きなホールです。バレエやオペラなどの大きな公演にも対応できるような舞台裏になっている素晴らしい施設です。こちらで、実際に映像を流しつつ、弁士の山城秀之さんとあわせながらの贅沢なリハーサルの時間をとることができました。

本場直前ステージリハでのポイント

・マイクに音を拾ってもらう〜お客様に聴こえるまでがゴール
SEの手段として、今は「ポン出し」アプリをスマホから出したり、専用のデバイスを設置したりして、基本的に指1本で出すことが多いと思うのです。私は、無声映画はシンセ演奏がメインなので、鍵盤に「ポン出しSE」を仕込むようなことも経験があります。一方、生楽器を生演奏でSEとしてマイクに空気がある環境、その他の音も拾ってしまう環境でアンビエントに拾ってもらって、それをアンプ→ミキサー→スピーカーを通して客席に拡散されることになります。
「棒で叩くと言われたから、ポンと叩きました」ではなく、マイクにできるだけ拾ってもらいやすく歩み寄る必要があります。「やりました」というタスクの実行ではなくて、結果、ゴールがどこなのか?これについては、本番直前、もしくは、マイクがたててある空間でお伝えすべきと予定していました。

・ものおとをたてない
椅子をガガーと引かない、バチや棒、楽器を置く時にガチャっと放り投げないという良い例、悪い例を実際に提示しながらレクチャーさせていただきました。モノを置く時の音を軽減するために、それぞれ専用の楽器用座布団が設置していますが、そこからはみ出さないように、そっと置くのには、だいたい3秒くらいかける感じです。

・演奏のデモンストレーション
それぞれ、楽器の練習を動画をみながらしてこられたみなさんですが、最初にみなさんの演奏をチェック、テストするようなことはせずに、まずは私のデモンストレーション演奏をみていただきました。たとえば、「おりん」は、ただ叩くだけではなく、音が空気に伝わる波動にそって、円を描くとびっくりするほど、良い音色になります。もちつきの「スラップスティック」も、映像とシンクロするやり方を提示すると、とても楽しんでもらえたように感じました。

悪かったところ、間違っているところを指摘して修正してもらうよりも、恥をかかせずに確認の意味もこめてお手本をみてもらう方式の方が、教わる気持ちが楽になると思って、普段のレッスンでも取り入れている教育テクニックのひとつです。私の教室(むらさきmusicラボ)でも、同様にしています。今回も、緊張せずに、実践していただけたし、スタッフの方も安心して見守っていただけた様子です。

指導メモ

・暗いかもしれない アンチョコ(紙面)よりもスクリーンをみよう!

今回は大ホールで、舞台照明があったので、手元が暗いことはなかったのですが、無声映画では、基本的に楽士は暗い場所にいます。
今回の体験では、テキスト、動画のほかに、全体の流れの全体がみえる「スコア」のような構成図も各自に配布をしていただいていました。でも、それは、本番中に追ってみることは控えて、なるべくスクリーンをみていられるように、記憶方法についてレクチャーをしました。

タカアシガニのたとえ これは余談なのですが、かつて水族館の解説ツアーで学んだことです。タカアシガニが、逃げる時に脚を自ら切って捕食者に差し出して逃げるということから、自然界では「どっちがマシか?」という基礎思考があるというということです。音楽を指導する時に、最高のパフォーマンスを導くための優先順位をあらかじめ伝えておくのは、とても大切なことと心がけているところです。

指導メモ

楽屋トーク&練習

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SE体験に参加をしてくれた1~3年生、各学年の代表のみなさん
昨年度同様に、出演者サイン色紙を描かせていただきました。

今回の企画では、参加者さまのご負担にならず「もうちょっとやりたかったなぁ〜」くらいの体験を目指していたのですが、直前になって、「鮫の喰らいつき音」のガブッという音をつくるギミック(音効装置)を工作してしまったので、試しに持っていってみたところ、「やりたいひと!」に応えてくれる生徒さんが担当してくれることになりました。今、この記事をご覧くださっている客席にいらしたみなさん!あの印象的な鮫のシーンには、このようなビハインドストーリーがあったのですよ。ステージリハの1回だけ実践練習をした後は、この楽屋時間に、いろいろと研究してくださったのだと思います。

それぞれが違う学年から1名ずつの選出ということでしたが、みなさんとてもフレンドリーで、そして、私にもたくさん話しかけてくれました。地域のつながりの濃い地域では、大人と会話をすることに慣れていると感じます。そして、質問をすることがとても上手だなぁと感心しました。地域の活動を支えている職員、スタッフ、ボランティアのみなさまのお力を感じるひとときでした。

そしてステージへ

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下手(楽士サイド)からみた客席と上手
弁士席には澤登翠先生と山城秀之弁士
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第一部の下手風景

第一部は、山城弁士の担当。
海の水はなぜからい(10分)

山城弁士の流れるような説明と中学生さんたちのSEが調和をして素晴らしかったです。中学生さんたちは、私が見る限りノーミスでした!観客のみなさんのリアクションも意外な結末に大いに湧いていました。
中学生さんたち、退場時に握手!満足な気持ちが伝わってきました。

野狐三次(14分)
ご当地出身の円谷英二監督がカメラマン時代の作品ということで、そう言われていると、画角などがウルトラマンっぽいなぁ〜と感じてきました。山城弁士のかっこい啖呵に、ズドン!と太鼓を入れられてとても楽しかったです。

雷電(18分)
仁井田といえば相撲ということで、映画なのですが、取り組みをみながら観客のみなさんが「おぉ!」と手に汗握る反応を観客の皆様がくださって感激しました。

第二部は、澤登翠先生の登場です。拍手喝采!観客のみなさんの期待に応える心を打たれるご挨拶のあと、賑々しく開幕です。

豪勇ロイド(49分)
三大喜劇王の一人、ハロルド・ロイドの名作を最長版でお届けなのですが、澤登先生との本番は、本当に楽しい!キャッチボールのようにアイコンタクトをしながら、お互いがライブで進行していく感じです。本作は、9月に東京で上映を同じ座組で経験させていただいたのですが、毎回、異なる切り口が見えてきます。今回は、猫さん、それぞれのキャラクターが際立っていて、それぞれ別ネコの声色になっているようでした。七色の声色は、動物界にまで!お客様も大満足で割れんばかりの拍手喝采でした。私も演奏させていただいて本当に楽しかったし、誇らしかったです。

終映、記念品贈呈、お見送り

今年度も本当に素晴らしい心尽くしの記念品を頂戴しました。

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地域特産販売コーナーでゲットしたお惣菜

そして、昨年は、楽器の撤収、梱包に時間がかかって、買いにいけなかった地域特産販売コーナーに、今年はパパっと梱包、着替えをして駆けつけました。お惣菜のほか、和菓子もゲット!余韻に浸りながらちびちびいただこうと思っています。

お見送りを背にタクシーにのると、スーパームーンが!この日の空のこと。行きは、澄んだ青空。帰りはスーパームーン。一生覚えていたいなぁ〜と思える空模様でした。

楽しい帰路と打ち上げ!

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須賀川市のゆるきゃら ボータンと
中央 澤登翠先生
右山城秀之弁士 左 筆者
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二次会のお茶タイム
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店内の「蛍の光」閉店メロディが流れるまで盛り上がりました


一夜あけて、楽器の配送のことで、主催者さまと少しだけ電話でお話しできたので、改めてあたたかいおもてなしの御礼を申し上げたところです。

マツダ映画社社 ホームページ にて、近々に詳細が告知されるのですが、澤登先生、山城弁士とは、また近々にも座組させていただく番組が控えています。どうぞ、お楽しみに!

そして、澤登先生の毎年恒例の12月のリサイタル!私も客席で観覧予定でチケットを買わせていただきました。

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東京 新宿駅近く 紀伊國屋書店の4階のホールです。

ご存知の方も多いのですが、私は2016年まで幼稚園の園長を務めており、「無声映画」に関わるなんて、夢にも思っていませんでした。いろんなきっかけがあって、ステージを観る側から、出る側になってみることになりました。

今回も任井田地域のみなさま、中学生のみなさんとの交流を経験させていただき、本当に嬉しかったです。このような記録をさせていただき、「むらさきmusicラボ」で音楽教育、音楽ビジネス、こどもと音楽について、共に研究をすすめていきたいと思っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。