活動弁士&楽士の祭典!
無声映画鑑賞会800回を記念して、
空前絶後、日本中で活躍する弁士、楽士37名が一堂に会するいまだかつてない規模の活弁公演が開催されました。




【麻生子八咫さんと初共演】
私の出番は、昼公演の4番。
チャップリンの冒険(1917 アメリカ)
THE ADVENTURER
監督 主演 チャールズ・チャップリン
初共演の活動写真弁士の麻生子八咫さんは、お父様であり師匠でもある麻生八咫さんとご活躍中(明日、3/22には、浅草公会堂「活弁と浅草オペラの浅草パラダイス」が開催予定だそう!)
初顔合わせのリハーサルは、浅草の「健康になる活弁教室」の終了後に場所とピアノを確保しての万全の体制をご準備いただいて、20分の作品を合計4回も通し稽古でそれぞれ和洋とりまぜて全く別の曲調で即興伴奏をさせていただきました。
子八咫さんとのリハーサルなのですが、光栄なことに麻生八咫さんもご同席ということで、アドバイスをその都度頂戴して、だんだんと子八咫さんの活弁に寄り添っていける準備にむかっていけました。個人的には、八咫先生にお稽古をつけていただいたような気持ちで大変得をした経験だと思いました。

【当日逆リハからの急展開!】
さて、当日の朝。東京はなんと雪でした。電車もおそるおそる運行という感じで、朝の集合時間にギリギリ間に合ったのですが、他の出演者の方の中には電車遅延などで影響を受けた方もいらっしゃった模様でした。
多くの出演者が入れ替わるオムニバス公演なので、持ち時間は1演目20分間。子八咫さんが、本作の回転時間を早める編集を自らされて、前説の時間も確保してくださいました。才媛として知られる子八咫さんはPCにもお強い!敬服です。
逆リハーサルでは、浅草リハーサル時に最後に録音した「1920年日本の少女が西洋舞踊を学ぶ」というTikTokで見つけたモチーフを元にした演奏をしたのですが、その後で麻生八咫さん、子八咫さんのアイディアで、前説でも演奏することや、イメージを喜劇っぽくガラっと変えましょう!というご提案をいただき、急遽、浅草リハーサルの時に持参した候補モチーフのひとつのラグタイムを中心に、即興演奏をすることにしました。
おかげ様で、子八咫さんとお客様、スクリーンとの親和性を高評価をいただいたようでほっとしています。これからも初座組の弁士さんに対応させていただくこともあるかと思うので、糧にできたらと思っています。
【レアなピアノ登板 からの感謝の気持ち】
私は、普段はシンセサイザー演奏なので、音色やボリューム、リバーブなどをシーンごとに事前にアサイン(入力)する準備をしておいて、日々のルーティーンは映像をみながらリップ(唇)を読んで弁士の説明の妨げにならない即興演奏稽古。本番は弁士の説明を聞きながら即興で対応をするという手法をとっています。
今回は、自分で組んだ音色のシンセサイザーではなく、ピアノなので丸腰の即興演奏を1920年代アメリカモチーフをいくつか組み合わせながら挑みました。
子八咫さんの特色、持ち味はなんといっても元気の良さ、発声されるたくさんの擬音にも被らないように配慮しつつ、慣れないピアノでの楽士演奏で、私もお客様の笑い声を後押しするような「自称ニコニコ大会専属楽士」らしい演奏をさせていただきました。
ピアノのみで無声映画の伴奏をすることは滅多にないので、私はピアノで弾く用の本番靴を持っておらず、写真のデカ靴は、娘の25センチの黒靴を拝借しました。シンセサイザー演奏ではダンパーペダルを踏むので裸足で、移動時はサンダルをつっかけています。今回の現場で他出演者の皆さんから、
「まりさん、今日楽器は?」
「雪で楽器、大変だったでしょ〜」
と、優しい言葉をたくさんかけていただきました。
普段は、シンセサイザー、スピーカー、予備ケーブル、工具など大荷物も若手弁士の皆さんにも運搬を手伝ってもらったり、宅配便の手配などいっぱいご迷惑をかけっぱななしなので、そんな言葉をありがたく思いつつ、靴も靴下も履いて楽屋にいる自分を楽しませていただきました。そして、いつも楽器大荷物を気にかけてくれる周りにも感謝の気持ちが溢れました!
【これまで出演させていただいた無声映画鑑賞会について】








[再発見!独立系活動写真特集]2021_8









数えてみました。17回、出演させていただいています。なんと!光栄な!ありがたい!
2016年にデビュー以来、これまで、無声映画はのべ138作品に関わらせていただきました。
2017年に澤登翠先生にお誘いいただいてから、幸いなことに出演を重ねさせていただいています。
「無声映画鑑賞会」に年に数回出演させていただくのが、「先生業」を本業としているワタシには、本当に眩しい「ハレ」の日です。
よろしければアーカイブもご覧くださいませ。澤登翠先生と一緒の地方公演や、デビューをさせていただいた「喜劇映画研究会」時代の担当作品の記録のアーカイブです。
【コロナ禍での無声映画鑑賞会】
さて、無声映画鑑賞会出演の思い出で、印象に残るのは、コロナ禍のことです。
■第740回 無声映画観賞会 『春爛漫!!ニコニコ大会』
2020年7月14日 東京・古石場文化センター
コロナ禍による感染防止のため、3回目の仕切り直しでやっと上映できました。
チラシも3回、刷って配って、当時は先が見えないのに、稽古を閉じてしまえば指が動かなくなる恐怖から、「キートンの滑稽恋愛三代記」の稽古は、ラボのレッスンの代替えでのオンラインZOOMレッスンの後、夜な夜な続けていました。
その後の2021年8月3日 第751回無声映画鑑賞会も、当初は2月に予定されていた予定が延期となりました。コロナ禍中は、座席数も間隔をあけて半分のキャパとなるため、興行的にも大変だったと思います。
その他、上記のチラシギャラリーには、直前になって出演者の一部が代演となった時に私が代演者用にツギハギで貼ってつくったチラシもあれば、私が急遽伴奏することになって名前がないものもあります。
その都度、共演者みんなで助け合いながらも楽しかったですし、予定どおりの出演者が揃った時もワクワクといろんな思い出もあります。
毎月の無声映画鑑賞会は、都内のいくつかお馴染みの公共ホールが会場となっていて、その中のひとつ日暮里サニーホールコンサートサロンの時には、スクリーンもフィルム上映機材もマツダ映画社の機材車で持ち込まれます。それを組み立てるのも弁士なら、自分の出番以外にフィルムを廻すのも弁士や松戸会長ご自身です。
無声映画鑑賞会の強さは、コロナ禍中の興行で、ミュージカルなどたくさんの歌がある芸能に比べて、「無声映画はコロナに強い」という意識も伝わったことから、根の深いものだと言えると感じました。
【七色の声色 澤登翠先生】
800回記念公演は、昼の部は客席で、夜の部は最後のフォトセッションのため、舞台袖から、澤登翠先生の声を拝聴していました。
私にとって、伴奏とそれにまつわるあれこれの時間の時には、ご本人からのリクエストで「翠さん」とお呼びすることを許していただいています。作品に取り組む前に、「どんな作品でどんな音楽がお好みか?」という相談を翠さんとさせていただくこと、私にとって「無声映画鑑賞会」に出演することは、すべて翠さんから始まる気持ちでいます。
私にとっての「無声映画鑑賞会」出演の17回は、「お仲入り」後には澤登先生の伴奏をさせていただく予定で準備をしたもので、事情により欠番の回では代演の澤登門下の弁士さんたちとともに、師匠の澤登先生へ気持ちを寄せる時間でした。
【準備は笑えない!ニコニコ大会】
私の出演回数17回のうち、6回はアメリカ喜劇特集の「ニコニコ大会」です。1回の番組のうち3作品が上映されるのですが、弁士は交代制。一方、楽士は私がひとりで複数回担当するので、一番気を使うのは、同じような曲調、同じモチーフを使わないこと。楽譜を用いず、モチーフを元に即興演奏をしているので、ぼ〜としていると、似たような雰囲気になってしまう危険を感じて、自分で集めた1920年代風の著作権切れのメロディをシーンの内容や用途別にファイリングストックをしています。
スラップスティックの喜劇表現はある程度、型があるので、そのセオリー通りにテンポアップしたり、ちょっと残酷で痛そうなシーンでも、明るい喜劇、ポップに仕上げるのが楽士の職人技と意気込んで研究をするようになりました。
「ラグタイム」などで、右手はシンコペーション、左手はスライドピアノ奏法で大きく動くもののノンシコペーションなので、普段クラシックを弾いているピアニストには戸惑いがあるかもしれません。私も必死で稽古を続けています。そんななかでも、「チャップリン」など主役別の自作のテーマモチーフも揃い踏み、毎年オファーの確約があるわけでもないのに、シーズンオフでも静かにモチーフ集めもし、「備えあればニコニコ大会」のYouTubeチェックは年中無休です。
そんななか、「ニコニコ大会」というタイトル以外の「アメリカ喜劇特集」:主役は全作品「ロイド」という楽士にとっては鬼のような「ロイド!ロイド!!ロイド!!!」という番組も経験させていただきました。
【無声映画鑑賞会 800回代への意欲】
私は、1910年生まれの祖父が喜劇俳優、祖母が満州 五族交響楽団の歌手を経験した話を楽しみに聞いていたことから、幼稚園園長時代を経て、無声映画へ少しずつ近づいてこられました。(詳しくはホームページ別項)
無声映画鑑賞会への出演は、お声がけをいただいて叶うものなので、これから先、どのような作品に出逢わせていただくのかはわかりませんが、チャンスがいただけるのであれば、また出演させていただければ幸いだなぁと思っています。
無声映画鑑賞会、800回もの公演継続。
誠におめでとうございます。