江東区共催事業ということで、街中、会場内のエレベーターなどいたるところに公演ポスターが!右端は、スクリーン&サウンドチェック中 古石場のスクリーンは、大きめなので、見やすいです。

6/2のカツベン映画祭Aプログラムでも共演をした植杉賢寿弁士は、本日もユニフォームのアロハ。何枚持っているの???同じポーズのわたし。山崎バニラ弁士のブログに詳しくありますが、バニラ弁士と同期弁士の片岡一郎弁士と坂本頼光弁士の顔がプリントされています。最強の同期3名弁士とは、ワタシは全員の伴奏経験があります。

山崎バニラ弁士のブログ も是非、ご覧くださいませ。

 

第779回無声映画鑑賞会
[ハロルド・ロイド生誕130年 三大喜劇王ニコニコ大会]

4年連続で、1920年代を中心としたアメリカ喜劇を集めた「ニコニコ大会」での伴奏を担当させていただいています。同じ時代のものを続けて演奏する場合、同じようなモチーフが重ならないことに注意をしています。弾きやすいモチーフのストックの表をつくって、同日の上映作品に割り振っていく作業はまるでパズルのようです。

毎年、欠かさずご来場くださる方にとっては、聴き覚えのある曲が多いと思うのですが、自分のオリジナル曲のうち「チャールストン」「ラグタイム」など時代性のあるものは、毎年どこかしらで使い回しています。そして、うっすらと聞き覚えのある古い曲が著作権切れであるのか?を確かめるためには、それをピアノで弾いてYouTubeにアップロードすると、自動で検閲してくれることも学びました。問題ないものを使っています。

1920年代のアメリカ音楽には、「ドタバタ喜劇」と同様に、一定の作法があるようで、終止形にそれは強く特徴があります。動作でいうと、シルクハットをくるりんぱのようなちょっと余計な挨拶のような定型の終わり方があるので、レトロが好きな方には、そのあたりに気づいていただけるとより楽しめると思います。

1920年代も終わりに近づくと「チャールトン」など、アフタービートのグルーヴの音楽がでてきます。それまでのラグタイムなどは、1234の拍子のうち、1拍目が強い普通のビートなのですが、ビートこそは1拍目におきながら、心ではちょっとシャッフルさせます。私は、ピアノでこれをこどもに教える時には、「パックマン」みたいなモンスターを譜面に描いて「ビートを喰う」と説明しています。1930以降のスウィングでは、譜面には付点がなくても「オールウェイズ スウィング」という注意書きがあったりします。これも、スウィングの度合いは、3連譜や、付点音符(3対1の4分割)では表せないグルーヴが表現できるととても楽しいです。私は、耳コピをしてマスターしましたが、全音でわかりやすい教本もでています。

無声映画の演奏の仕事で、JAZZが弾けるのは「ニコニコ大会」だけなので、とても楽しみにしています。

JAZZでアフタービートを弾いて、次のシーンでは、クラシックモチーフで、1泊目にアクセントになる。そんな切り替わりがとても弾いていて楽しいです。

カツベンは、ライブなので、映像作品と、弁士の語り、情景を映し出すストーリーテーリングとともに、3番目の要素として音楽もお楽しみいただきたいと思います。

初めて私の演奏(シンセサイザーによる多様な配合した音色による生演奏)をみられる方は、CDやスクリーンに付属している演奏と一緒に演奏していると思われる方もいらっしゃいますが、無声映画は、全くの無音状態な上に、フィルム上映などの場合、いつトラブルがあるのかもわからないので、配合する機能や、瞬時に音源を呼び出す機能、ボリュームをあらかじめ場面ごとに設定する機能など、リアルタイムで調整できる機能のみを使用しています。

特定の鍵盤に犬の鳴き声(今回は4匹分、取り替えられる犬は最も高い声、代打の犬は、最も低い声)などをプリセットしています。

楽譜を用いず、要所要所の場面ごとのモチーフは憶えているので、お客様には、ただただスクリーンを眺めながらカツベンを聞いて指を動かしているスティービー・ワンダー状態(鍵盤もみていない)の私しか見えてはいませんが、映像を理解して、尺からBPM(速さ)割り出す分析作業、シーンにぴったりの終止形をつくったり音色を選ぶことにはじまる作業には、実際に鍵盤を弾く練習以上に時間をかけています。

無声映画楽士のデビュー作品がジョルジュ・メリエスの「月世界旅行」(弾き語り演奏)だったため、なんとなく電子楽器を選びましたが、後になって歴史作品などを手掛けるようになってくると、例えば「戦艦ポチョムキン」などでは、キエフの琴とロシアの琴の音色の違いを設定することができるなど、電子楽器の無声映画の応用はまだまだ伸び代があると思っているところです。

使用楽器 Rolando JUNO-DS61

私のこれまでの無声映画担当作品アーカイブ

無声映画楽士の仕事について インタビュー

音楽モチーフの紹介(・はオリジナル/★は、クラシックモチーフ)

『チャップリンの公債』The Bond (9分間)=

クラシック曲たちは、それぞれ映画内オムニバスの内容、伝えたいことに沿ったものを選びました。

・1920年代っぽい退廃的なジンタ

・フラッパーヘアが似合いそうなラグタイム

★Carlos Gardel/Por una cabeza(ハウスオルガン音色)

★シューベルト/アヴェ・マリア(オーケストラ音色、聖堂オルガン音色)

★メンデルスゾーン/結婚行進曲(カテドラルオルガン音色)

★コダーイ/Háry János: Intermezzo(オケ スタッカート音色)

 

=『キートンの滑稽恋愛三代記』Three Ages(64分間)=

愛の曲をいっぱい集めてみました。

★G.P.Martini /D:Piacer d’amor 『愛の喜びは』→全体の真理のテーマ

★イタリア歌曲集(マンチャ)/Star vicino『側にいることは』→愛のパワーによる勇気のテーマ

・ウォレスのテーマ

・キートンのテーマ

★Kurt Weill/Die Dreigroschenoper『三文オペラ』→両親のテーマ

・リズムアラビック(占いのテーマ)

・摩天楼(1923年現代のテーマ)

★ Poulenc /La dame de Monte-Carlo 『モンテカルロの女』→お金の説得力

★Fritz Kreisler/Liebesleid『愛のかなしみ』→嫉妬

Johann Strauss II. (息子)/ Tritsch Tratsch Polka→レスリング

★Johann Strauss II. (息子)/An der schönen, blauen Donau『美しき蒼きドナウ』→お上品なキートン

・こっとんくらぶ 楽団演奏シーン

・コロセアム 原始時代&ローマ時代決闘

・犬剃りレース

★Johann Strauss I. (父)/Radetzky March 『ラデツキー行進曲』

★Carl Orff /Carmina Burana – 06. Tanz『ダンス』(変拍子の代名詞のような有名な曲です)原始時代の投石器による戦闘シーン

★Éric  Satie/Je te veux『お前が欲しい』ローマ時代ライオンのグルーミングシーン

1920年代の音楽としては、『ジャイブ』(階段登り)、『コンチネンタルタンゴ』、『ブギウギ』の定型のコード進行とリズムで即興演奏をしています。

☆即興演奏と作曲&暗譜の違いについて〜〜何回パフォーマンスしても同じようにできるのが、後者ですが、即興だと、毎回、違う音楽になってしまいます。それは、自分で即興をした曲を弾いた瞬間に忘れているからなのですが、そもそも自分で弾いていて何故憶えないかというと、目でみたものと耳で聞いたカツベンで自分が感じたままに表現しているからで、イメージ対イメージで言語化していないので長尺だとモチーフと、調性のみ決めているだけなので、メロディラインは、その時の指にまかせているだけです。私の「即興演奏」のレッスンでは、レストランのメニューなどを用いて、「感じたままに弾いたまり先生の即興演奏」を体験してもらって、次には、生徒さんにいろんなお題を出してもらって、私が弾くのを繰り返しています。「弾けるようになりたい」でレッスンにきていて、聴いたり、出題してばかりからはじめてしまうのですが、まずは手順と仕組みを理解してもらうレッスンをしています。(オンライン、成人むけ、お子様むけでも人気の講座です)

 

=『田吾作ロイド一番槍』THE KID BROTHER(83分間)=

アメリカの代表的な音楽のカントリーミュージックは、アパラチア山脈を境にしているということを教えていただいたものの場所の特定ができなかったので西部劇風なニュアンスとカントリーのニュアンスを入れ混ぜた構成にしてみました。

☆タイトル不明 田舎のロイドの英知のテーマ タイトルわかる方いらっしゃったら教えてくださいませ。

・JINTA 母 

★Foster/Camptown Races『草競馬』

・チャールストン    →死には至らない追いかけっこのドタバタ喜劇

★Grieg/Peer Gynt uite No.1,In the Hall of the Mountain King

・ブギウギ →家族間のお小言、こづきあい

★Julius Fucik/Entrance of the Gladiators →遠景のメディスンショー見世物小屋

・Maryのテーマ(2小節のみ)

★Leroy Anderson/The Syncopated Clock→ロイドの全自動皿洗いマシーン

★ Bizet /Habanera  →メディスンショー パフォーマンス

・カントリー バンジョー音色

・金庫破り →群衆

・イントレランス →不満を持つ群衆(イントレランス上映時につくったメインテーマ)

★Eino Kettunen / Ievan Polkka(イエヴァン・ポルッカ)猿のテーマ→初音ミクで有名な曲です。

★Mussorgsky pictures 『Baba Yaga』1小節最初の2拍のみ→群衆の闊歩

★ Khachaturian/Variation of Aegina and Bacchanalia / Scene and Dance with Crotalums / Dance of Gaditanae and Vi ごくごく小さい借用→タイヤを転がしながら馬車を駆るロイド

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=作品紹介=

『田吾作ロイド一番槍』THE KID BROTHER(15:35~)
1927年 米 ハロルド・ロイドプロダクション作品 (83分)
監督/テッド・ワイルド 
出演/ハロルド・ロイド、ジョビナ・ラルストン
弁士/澤登 翠

『キートンの滑稽恋愛三代記』Three Ages(14:15~)
1923年 米 メトロ=キートンプロダクション作品 (64分)


監督/バスター・キートン、エディ・クライン


出演/バスター・キートン、ウォーレス・ビアリー


弁士/山崎バニラ
『チャップリンの公債』The Bond (14:00~)
1918年 米 ファースト・ナショナル作品 (9分)

監督・主演/チャールズ・チャップリン

出演/エドナ・パーヴィアンス、アルバート・オースチン

弁士/植杉賢寿