元幼稚園園長だった「まり先生」が、なぜに「無声映画」での演奏を続けているのか?というと、無声映画に出てくる1920~30年代の人間、食べ物、動物の魅力なのです。
 
28年勤務していたむらさき幼稚園は、完全お弁当の園でした。食べもので人間はできていると、ご家庭も園も先生方も意識している人の中でずっと仕事を続けていました。
園には、アレルギーなどの事情があるほか、添加物の管理をしたい食に関心の高いご家庭も多く、小さい子たちの保育には、もちろんトイレの世話もあるので、食べるものによっての結果の違いを長年みてきて「生きる」ことを感じてました。
 
 
『血煙高田の馬場』1937という作品で、山盛りの飯をかきこんで食べるシーンがあります。昔の日本人は、大量のご飯を盛るというのを昔の映画で知るわけです。気力の「気」という字が「氣」だった時代です。 
なかに「米」という時が入っていますよね。
それくらい日本は、米を食べる文化だったことを、私は、無声映画伴奏ではじめて知りました。
 
私は、1967年生まれなので、給食はほとんどパン食だった時代です。
 
 
昨年伴奏させていただいた「伊豆踊り子」1933では、若い田中絹代の蕎麦をすするときの勢いが衝撃的。
口幅がね。
ほぼ、ラーメン大好き小池さんくらい平たく蕎麦を咥え込んでいるわけです。
 
たぶん、そうやって啜ると一番、汁の味とのハーモニーが良く味わえるのでしょう。
 
そんな蕎麦の出汁は、もちろん天然ですよね。その当時はね。
 
当時の食べ物に対する魂の入れ方がすごく高いことを感じるのです。
 
添加物とかない時代。
 
そうゆうものを食べていた人間をみられるのが無声映画だと、今は感じています。
 
 
今回伴奏する「国士無双」では、お座敷料理を楽しむシーンがあります。
 
 
6月2日(金)10:00~ Aプログラム(坂本真理は、前半の『国士無双』にて和楽器(琴、和太鼓、三味線などの音色でシンセサイザー生演奏)
 
この他にも、いろんな昔ってすごいな、という無声映画トピックスはいっぱいあります。
 
有名なのは、スタントなしの主人公の飛び降りシーンだったり、崖下り、川くだり…etc.
 
演じる主役たちは、撮影事故で指を失ったり(ハロルド・ロイド)しつつも、果敢な演技を続けて作品をリリースし続けました。
 
 
もうひとつ私の好きな大きなライオンの話。
写真出典 wiki バーバリライオン(Panthera leo Leo):Sultan the Barbary Lion, New York Zoo, 1897

無声映画にでてくる「ライオン」の大きさが、「ちょっと大きすぎない?」と思って、いろいろ調べたり、動物園に目視をしにいったりした時期がありました。動物専門の芸能プロダクションは、今でもありますが、当時は、調教技術も発達していたので、びっくりするくらいの演技をライオンも、その他の動物たちも存在感たっぷりに演じています。今は、動物保護の観点から、電気鞭などの規制があることも手伝ってか、動物たちに痛み、苦しみがあるものはその方がよしとしても、それにはあたらないまっとうな調教技術と人材も失われたということです。

そして、バーバリーライオンのように細かい亜種の中には、すでに絶滅したものもありますが、無声映画時代には、ギリギリ、その子孫たちが、芸能、サーカス、動物園では生き残っていたそうです。暴君ネロの時代の「ライオン狩り」に使われていたヨーロッパライオンは、2世紀に絶滅したそうですが、それに順ずるくらいの大きさのバーバリライオンがかわって、勇猛なローマの時代劇にいくつも出演したのだと胸を躍らせてしまいます。

「ロザリーとライオン」1989 こちらのライオンはCGで大きく加工したのでしょうか?無声映画にでてくるライオンのサイズ感とぴったりな画像をみつけました。もはや私は、動物園などで生のライオンさんをおみかけすると、逆に「ちっさい!」と思ってしまうくらいパースが狂ってしまっています。

2019年 国立映画アーカイブにて担当させていただいたアフリカの野生動物がたくさんでてくる無声映画「テンビ」では、大きな大きな「イリエワニ」がでてきました。

まり先生のこどもたち【自分で産んだ子供(26歳👩22歳👨2023現在)と、むらさきmusicラボの会員のこどもたち】は、いつも私がオファーをもらった映画のテーマ探しを共有しているのですが、いろいろいつも大盛り上がりで、いろんな発見をします。まさに「ラボ」(共同研究所)ワークなのです。

クロコダイル/アリゲーター/カイマンと、実はいろんな種類がある「ワニ」の世界。

同様に、「蛇」「海の亀、陸の亀」いろんな発見があります。

あと、次に控えている作品なのですが。6/26 

第779回無声映画鑑賞会[ハロルド・ロイド生誕130年 三大喜劇王ニコニコ大会]

にて山崎バニラ弁士が説明する『キートンの滑稽恋愛三代記』Three Ages1923

では、石器時代篇にて、首の長い恐竜がでてきます。

わたしのこども時代は、「はじめ人間ギャートルズ」にでてきた「ブロントサウルス」がポピュラーな恐竜で、分類としても「カミナリ竜」と呼んでいました。

私は、第一次、第二次、第三次、たぶんいろんな恐竜ブームを自分の産んだこどもの時代や、長い教員生活の中でも体験しているのですが、恐竜の世界もコロコロ変わってきていて今は、竜脚類 という分類の模様です。

ブロントサウルスは、今は、アパトサウルスと呼び方が異なる説、分類で分けている説、いろいろある模様ですが、今のこどもたちにとって映画にでてくる首の長い竜は、ブラキオサウルスという意見が多かったです。

ブラキオサウルスは、首長竜の仲間です。現在の図鑑では、首が縦に伸ばせないことが記載されています。

だから、YouTubeでその恐竜パートをこどもたちにみせると、「変なブラキオサウルス〜〜」って、ことになるのです。

もうネタの宝庫ですよ。無声映画は!!

まり先生が無声映画を通していろんなことがらを吸収して、疑問をもつこと。

そして、大人になっても一生懸命「勉強」「研究」をし続けていることの背中をみてくれていると感じています。

「まり先生、またお化けの映画をやるの?」

ラボの窓を暗転用の段ボールで塞いで暗い中にスクリーンを降ろしたまま、こどもたちをラボに迎えると、私が暗闇で「お化けの映画の研究」をしている疑惑がたちます。

年間の上映回数をたくさん持つプロの無声映画演奏家という方もいらっしゃいますが、私は、年に数回、マツダ映画社にオファーをもらって出演させていただく感じで、毎年、すこしずつ経験本数の自己記録数を増やしていっている感じです。

これまでの担当 無声映画のアーカイブ

幼稚園園長時代は、夏休みなどの長期休暇中に外部で「リトミック講習会」や「こどもの城」にて、ゲストミュージシャンとしての演奏をさせていただく程度で、極細のミュージシャンキャリアだったのですが、2016年に園長退職後、「むらさきmusicラボ」を立ち上げて、1日中、音楽に関連づけた事柄だけをできることは、本当に夢のようだと思いました。保育下では、こどもの命を預かることが最優先だったので、リトミックの授業予定があっても、園でケガ人がでれば、全て放って救急病院にも付き添う日々でした。

でも、長い園長生活において、私は、いろんな人間観察を勉強させていただいていました。

それが映画となって、シーンとなって切り取られて鍵盤の前に座ると、幼稚園時代や、こどもたち、それをとりまく大人たちの様々な人間の感情や風景、自然との交わりが音楽となって聴こえてくるようです。

 

「むらさきmusicラボ」は、音楽教室ではなく、「おとな、こどもを問わない音楽のお城」、共同研究施設として様々な業務をおこなっています。

・個人レッスン(こども〜大人のピアノ、音楽理論、作曲、リトミック、ピアノ教師のためのパーカッション入門)

・ジュニアクラス(幼児親子)アンサンブルクラス(大人、こどもみんな一緒 みんなの音楽室)

・小学生クラブ、れんげクラブ(小学生の学童保育的な音楽室 おやつ付き)

・保育園、インターナショナルスクールなどのカリキュラム作成 コンサルティング

・オンライン相談(発達支援、音楽教師のための指導案作成)

 

ラボ以外では、4つの保育園(園ごとに月1)、系列園の保育士研修(月1)、国立市民大学講座リトミック(年4回)、それ以外にもレギュラーで毎年呼んでいただいている教育機関もあります。

そして、最近では、楽器製作者としてのワークショップの域を超えて、プロミュージシャンがライブで演奏してくださる用のものをオーダーしてくれるようになり、それがきっかけで趣味の瓢箪のつながりも新たに生まれてきています。

 

かつてのわたしのバランス定義は、

〜リトミックは、音から動きを創造していくことを教えて

〜無声映画では、そこに音がないものに音をひとつずつあてて、テンポを与えて音の情景をつくること

 

そんな風に自分で定義づけをしていました。

 

でも、そこにビーズをひとつずつ瓢箪に編み込んでシェケレを製作するようになると、そこには、無声映画をつくる時にもよく似ている綿密な計画、未来的なデザイン力が関係していると思えるようになりました。

 

もともと園長時代にも、外部でのミュージシャンとしても、私は進行表や配置図を書くのが得意というか、頭の中で暗算のように、人間をコマのように動かすシミュレーションを脳内だけでイメージして、それを手で自動的にタイプしていくことが特技でした。園長時代に培った「全体を見渡す」のは、もうほぼ職業病のようになっています。

よく人に、「まりさんは、園長の後にいろんな回り道をされて、最終的に無声映画の音楽をつくるようになったのですね。」と、苦労話のようなまとめをしていただくことがあるのですが、

たまたままだお誘いがあるうちは、担当させていただいている無声映画を可能な限り、一生懸命やっているという感じで、まだまだ、人生は遠回り中です。

むらさきmusicラボで、来年、数年さき、

こどもたちや、大人の生徒の皆さんとどんな会話をしているのか?想像もできませんが、どのような場所でも音楽家として、教育家として、ひとりのアーティストとして、ベストが尽くせればなぁ〜と思っています。

 

無声映画を今年も続けていられることになったことを感謝しつつ、最後に再告知をお許しくださいませ。

第一回から連続で参加させていただいている「第3回カツベン映画祭」 

インターネット予約 本日正午より発売いたしました。新宿武蔵野館¥2000 全席指定

6月2日(金)10:00~ Aプログラム(坂本真理は、前半の『国士無双』にて和楽器(琴、和太鼓、三味線などの音色でシンセサイザー生演奏)


■演目:『國士無双』/1932年(昭和7年)片岡千恵蔵プロダクション作品
弁士:植杉賢寿/演奏 坂本真理
『デブ君の漂流 Fatty And Mabel Adrift』/1916年(大正5年)米・トライアングル・キーストン社作品
弁士:縁寿/演奏 神崎えり


新宿経済新聞【新宿武蔵野館で「カツベン映画祭」 7プログラム上演、弁士8人出演】