2022年度も、同系列の4つの保育園に毎月1回、学年ごとまたは縦割りで幼児の指導をしています。乳児は、3園では余裕のある時などに、「おみそ」感覚で「場慣れ」の感覚で混ざってもらうこともありますし、フラッグシップ園では、スペシャルに乳児のみのセッションも毎月継続しています。(ピアノのない乳児の保育室でのリトミックの情報は、ニーズも高いのでまた別にいつか改めて寄稿を予定しています。お楽しみに!)

また、年間で10回は、どこかの園で系列の他園の保育士も「企業研修」として見学と体験、質疑応答も受け入れて、それとは別に2回は、開催場所を「むらさきmusicラボ」として、休日に企業研修を行っています。

各園の年間カリキュラムは、共通で楽器や教材、絵本の読み聞かせも同一のキャラバン形式(巡回指導)となっていて、一部の園では、楽器の配送も託すことで、自分では運転していくことができない遠方の園でも、潤沢な楽器による指導を実現させていただいています。

会場の広さや、駐車場の有無など園によって状況が異なるので、全く同じ機材搬入というわけにはいきませんが、だいたいのロールモデルとしては、「サンバプログラム」ではこんな感じです。

「サンバ」に詳しい方なら、

「あれっ?ボンゴは『サンバ』の楽器じゃなくて『ラテン』の楽器でしょ?」

など、つっこみどころもあるかと思うのですが、ここが、「保育園リトミック」内での「サンバ」のミソでもあります。ネタバレをいうと、「コンガ」だと、2つの太鼓が組み合わさっているので、音の高低がわかりやすいというメリットがあるので、2拍子の説明のために使用する重要なポジションがここではあります。

これは、電車&徒歩で伺っている園での装備です。

毎回、私のリトミックでは様々な楽器を持ち込むので、保護者の方々への説明として、お迎え時に伝わりやすいように、エントランスにこのような掲示を用意しています。これは、私が園に到着してから、楽器をセッティングして、写真にとって、プリントしたものに名前をシールで貼るというアナログ作業なのですが、短い時間でぱぱぱっとやる連携プレーとなっています。

ここで、このホームページをご覧のみなさんに、ポイントをお知らせしたいのですが、「リトミック」をいろんな場所、それは、いろんなニーズで教えている「まり先生」(私)が、長年の経験でやっとわかった事のひとつです。

・教わる人が覚えるべき固有名詞はニーズによって、お菓子のレシピのように量を調整すること。

私は、ワークショップを開催していただく時でも、対象者のニーズ、音楽スキルについてのヒアリングをなるべくしっかりとして情報を把握することにしています。

例えば、本項目のテーマ「サンバ」であれば、「ブラジルの音楽や文化に興味がある人」「音楽スキルをすでに持っていて楽譜が読める人」「楽器の名前を知りたい人」「民族音楽に触れたい人」など、「サンバ」というお題目だけなのであれば、浅草サンバカーニバル上位入賞チームや、来日中や在留中のブラジル人のアーティストなどたくさんの選択肢があると思います。そして、私は、その意味では不適任です。「サンバ」を語ることさえ、本来ならばおこがましいというか、私には、「毎日の生活がサンバを中心にまわっていない」というその道のエキスパートではないという決定的なものがありますし、ブラジルの渡航歴もありません。リトミックの先生が、世界のリズムの体験の1コマとして幼児にわかる説明と情報をセレクトして達成感をもたせつつ、サンバを紹介するという概要です。

私とサンバとの出会いを少しだけお話しさせていただくとすると、中学在学中に、隣の武蔵野美術大学の「中南米研究会」の皆さんが楽しそうに奏でているサンバの音色が下校途中に漏れきこえてきて、学園祭でパレードやライブをみたのがきっかけです。音大在学中は、「打楽器アンサンブル同好会」、社会人になってからは「こどもの城」での音楽バイト(閉館された国立児童センター、世界中の音楽を紹介する音楽ロビー活動があった)、師匠の小澤敏也が各地で開催するパーカッションワークショップでのアシスタント業務として、サンバ楽器を鍛えられたこと、浅草サンバカーニバルへの出場経験といったことがあげられるくらいです。(詳しくは本HPのプロフィール 私の音楽ロードをご参照ください)

もし、保育園の趣向として「本物のサンバ」の情報を欲しているのであれば、プロ中のプロをネットで探して依頼すれば良いので、まり先生は、年に12回しかない貴重なリトミック指導の1回を「サンバ」にする理由はどこにあるのか?ということを明確に提示する必要があります。これに関しては、巻末の資料にて、入念に各園と系列園にアナウンスを事前に行っています。

こどもたちや、先生方にとって、何のメリットがあるのかわからない事のために時間を割いたり、協力をしなければならず、しかもそれで自分が「できるかどうかわからない」ということは、とても負担に感じるものです。「発表会」「運動会」の行事前ならなおさら、自分がやるべき事の時間は限られていることでしょう。外部の「リトミック」や「絵画」の先生が、自分たちの保育計画を邪魔をするという認識が生まれないように、年間カリキュラムも事前に周知しています。

では、「なんで?」幼児に「サンバ」なのか?「リトミック」からあまり広げないでも良いのでは?という核心に触れたいと思います。

幼児の世界には、「うそこ」というファンタジーの世界があります。

大人になってしまうと、もうその感性はなくなってしまうのですが、なんだかわかんないけど「心が躍る」とか「ワクワクドキドキする」という体験感覚があります。

幼児教育、保育上のスキルとして、そんな夢のような魔法を音楽とリズムで体験させてあげられたら、こどもたちの記憶にはずっと残るだろうな〜。大人になってから、音楽がもっともっと知りたい!という気持ちの動機になる種を植えておいてあげたいなぁ〜。そんな気持ちは、いつも持っています。

各園の先生方も協力的で、応援してくれています。「サンバの日を楽しみに待つ」ということで、こんな可愛いファンタジア(サンバの飾り物)をそれぞれの工夫、できる範囲で準備をしてくれています。

小学校にあがると、運動会の装飾なども、公平な予算分配という理由もあって、「みんな同じ」になりがちだと思うのですが、幼児の保育可では、こどもたちの意志を尊重しつつ、「個性」を潰さないように丁寧な対応をそれぞれの園で準備をしてくださっています。

「まり先生、俺のワンポイントは、折り紙の手裏剣を胸にバッチにした事だよ。」

など、セッション開始前のこどもたちの入場を迎える時に、こどもたちは早口に、私にマイアピールをしてきます。各保育園の先生方には、感謝しかありません。

左手のテーブルにあるのは、私が持参した毛糸や金モールをその場でこどもたちに着装をしてくださっている園の実施例です。こどもたちを半分ずつのグループにわけて、楽器を自由に触る体験コーナーと、ファンタジア着装コーナーで待ち時間をなるべく少なくするオペレーションができる動線をくみました。

楽器への触れ合いは、はじめから好きに叩かせないで、まずはしっかりと私のデモンストレーションを聴かせます。博物館や、児童館などで、楽器体験イベントがある場合も、まずは本来の音を聴かせるところから開始しますよね。楽器には、手で叩くものとバチなどを使うものがありますし、なんでもかんでも思いっきり強く叩くものでもないのですが、和太鼓を力いっぱいという映像イメージは、幼児でも認識しているので、楽器の保持のためにも気を使っているところです。

また、最近は、こどもたちはなんでも

「YouTubeで知ってる」

というのですが、それは、PCから再生される音なので、骨に響いて感じる音=生音については、本当にしっかりとわからせる必要があると思っています。少なくとも私が教えた子たちに関しては、生の音に貪欲であってほしいと願っています。

デモンストレーションのあと、

自由に個別に触る時間も持ちます。リズムに縛られることなく、音色を出すことに工夫をする「向き合う」時間です。

そして、アンサンブルの時間。これも、リズムパターンを決めるのではなくて、ゆるゆるです。ここでの目的は、サンバのリズム「パルチード・アウト」を覚えることでも、楽器名を覚えることでもありません。唯一、教えているのは、「2拍子」ということ。運動会の行進のマーチだけが2拍子ではありません。私のこどもの頃には、パチンコ屋さんが街中で「軍艦マーチ」を流していましたが、今はそれもなく、2拍子を認識する機会は減ってきていると思います。

世界中には、「サンバ」だけではなく「スカ」「ポルカ」など、2拍子でノリノリになれる素晴らしい音楽の世界はいっぱいあります。楽しい2拍子を身体で感じてほしいとまり先生は思うのです。

私は、「こどもの城」でのバイト時代、職員さんや他の音楽バイト(プロミュージシャンや音大出身者などの演奏スキルのある人限定)の皆さんと1日に数回のサンバ演奏をするという機会に恵まれました。他の楽器の演奏スキルがある人は、サンバの「タカラカタカラカ」というような4つめに強いアクセントがあるようなリズムに訛りのあるようなリズムパターンも覚えることができます。サンバは、複数の太鼓で構成されるドラムセットなら一人で成り立つような高低中音のアンサンブルを大人数で分割しておこなう「バツカーダ」という形態をとっています。ひとりで教えるよりは、誰に太鼓のパートを1個でも担ってもらいたいと思うので、保育士の皆さんにも、手伝ってもらいます。

「コントラ」 ひとりでも叩けるリズムパターンを二人で分割することで、単純化することもできます。

園によって、私の補助に慣れている園と、まだ距離のある園があるので、一概には言えませんが、リトミックを年間で指導をする関係を続けていく中で、このような演奏での信頼関係が生まれていくのも、チームワークに繋がって教育効果が高まることに期待しています。

 

最後に、研修参加者募集のための「リトミック新聞」と、保育者むけの部分案も共有しておきます。(期間限定)

こどもたちに、リアルな楽器の音色を楽しめる機会が滞りなくあることを心から願っています。

*研修新聞は、実施園など情報保護の必要性のあるもの、参考写真などを削除しています。