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先日、京都にて、「京都国際映画祭」に足を運ばせていただきました。

様々なジャンルの映画イベントが同時多発している中、サイレント映画の部門で登壇される所属している喜劇映画研究会の新野代表に便乗して、他の先輩会員とともに、ピアニストの伴奏、弁士の活弁、パーカッションを含めたアンサンブル、バイオリンアンサンブルなどのコラボのサイレント映画を堪能し、パーティにも参加させていただいてきました。

そんな中で、気づきとして、よく壇上の方々にオーガナイズされている吉本興業より派遣されたお笑い系の司会者の方が投げかける質問で、

「なぜ、サイレント映画に関わるようになられたのか?」

という質問への皆様がたの答えように、いろんなバックボーンが出るのだなぁ〜、というものです。

質問者の導きだしたい狙った答えとしては、

サイレント映画に伴奏をつける演奏者は、楽譜が用意されるとは限らないので、自ら作曲するか、即興するかという通常のミュージシャンではやらないであろう特殊な技術があるんですよ!ということを引き出したいのかもしれません。もちろん、そういった答えをなさっている方もいれば、違う方向に行っている方もいらっしゃいました。

と、いうのも、ミュージシャンとひとくくりにいうけれど、クラシック専門の演奏家は、譜面から読み取る作曲者の意図を読み取ることが多いので、譜面通りという認識が強いけれども、現代音楽家の作品に至っては、譜面も想像性を要求されることもあるし、ジャズや、私の周りに多いブラジル音楽系のミュージシャンたちは、皆、即興の技術も高く、むしろ、譜面がなければ演奏できない人が、見当たらないなぁ〜と思うくらいです。もちろん、皆さん、作曲能力も素晴らしいです。

私がもし、質問者の立場に立ったならば、

「楽士として演奏なさっている皆さんは、自分のことを伴奏者として捉えるなど、主役は映画、自分はその一部、という心意気を表現なさっているように感じますが、それはどういったポイントで今回は提示されていますか?」

というような質問をしたいくらいです。皆さん、本当に、映画を引き立てるように、それぞれの工夫をされていました。効果音のつけ方も、あまりジャストにすることにこだわらず、観る人の想像力の余白を残していらっしゃるように思えました。

さて、

そんな感想を持つ、ワタクシが、なんで「喜劇映画」「サイレント映画」に興味を持ち、それに音楽をつけることに取り組みたいと思うようになったかということについて、ここで、しっかり記録しておきたいと思いました。

<1 はじめに 私について>

時系列で、書かせていただく前に、まず、ワタクシについて。

・東京都内で家族が自営していた私立幼稚園で園長として勤務。閉園後は、音楽教室を立ち上げる。(専門はリトミック)

・リトミックは、映画の誕生とほぼ同時代に時代のニーズによって誕生し、当時の映画の中のコンテンツにも、「庶民に伝える音楽のイロハ」的な要素が見られることがあるくらい、共通項があると独自に着目している。

・園長時代から継続して、プロミュージシャンとして、こども向けの音楽鑑賞プログラム、打楽器や中世古楽などに焦点をあてたマニアックなイベントにて、演奏活動を行う。

・音声のない映画「月世界旅行」メリエス監督作品がとにかく好き。

・三世代に渡っての音楽一家に育ち、祖父は、古川緑波一座に所属していた喜劇役者。

 

<2  メリエス月との出会いは、サントリーCM>

では、物語は、一気に昭和50年代。

小学生だった私は、いつものように家族でテレビ「料理天国」を楽しみに見ていると、月の顔に弾が当たる不思議なCMに目を奪われます。

後から思えば、それが「メリエスの月世界旅行」だったのですが、インターネットがない時代、私の周りの大人は、そのことについては知らない人ばかりだったので、私はその映像が心に突き刺さったまま音楽の勉強を親に言われるように続け、音大に入学してからは、少しづつ、自分の道を模索して、打楽器サークルに入ったり、卒業後は、民族楽器に触れたくて「こどもの城」でアルバイトをして、自分の好きな音楽のフィールドが、EW&Fの宇宙に通じるグルーヴ感、ヴァレンシアのロックから感じる「異邦人」「月からの波動」など雰囲気、中世の放浪楽師のバグパイプのドローン音など、いつもどこかに宇宙を感じるものだったと気づきます。

民族音楽にたくさん触れていくと、「倍音」というキーワードにも多く出会い、もうそれはまさしく、「宇宙での空間移動に必要な音の波動による鍵」じゃないんか!と思ってしまうくらいです。

スターウォーズ、スターゲイト、スタートレック、いろんなSF映画が大好きでした。でも、ヲタクとして、詳細な情報を調べるわけではなく、ただただ家で自己流に、それらをイメージした自分の世界をピアノで遊び弾きしていました。小学生から師事していたピアノの藤原弘枝先生も、そんな私を受け入れてくださり、時折課題曲ではなくて、即興を聴いてくださり、宇宙をイメージしながらピアノに陶酔している私の横で、先生も楽しそうに指揮をしてくださっていました。

さて、そんな私も、音大を中高音楽免許を携えて卒業見込みとなるものの、就職先探しで難航し、バレエピアニストを志してみたり、歌のお姉さん業をやらせていただいたりしているうちに、ギリギリになって、卒園した幼稚園のリトミック講師に、「通信で幼稚園免許を取得」という条件のもと、採用していただくこととなり、最初は、「こどもの城アルバイト」も並行しての講師待遇、幼稚園免許2種、1種を取得後は、専任となり、代替わりで園長となってから、二人の子供を授かりました。

<3 メリエス月との再会>

二人の子供を育てながら、園長として働いているので、あんなに映画が好きだったのに、子供と一緒に行ける映画といったら「アンパンマン」ジャンルのみで、ストレスを感じているところ、幼稚園としておつきあいをさせていただいていた「ロバの音楽座」の通信にて、子供の頃に胸打たれたあの「月の顔に砲弾」の衝撃画像を見つけます!

これ!これ!

これが見たかった!と、子供、2人を連れて、ロバの音楽座と、谷川賢作さんの演奏での上映を見に行きました。それが、「喜劇映画研究会」との出会いです。今から10年くらい前ですね。

そして、そのあと、2007年くらいと思うのですが、バグパイプの近藤治夫さんと、古楽声楽家の辻康介さんが、「喜劇映画研究会」の上映を楽士としてされるイベントに一人で行って、そこで、代表の新野さんご夫妻と、初めてお会いして、それから、タイミングがあった時に、「喜劇映画研究会」のイベントに定期的に通うお客さんとなりました。

今から思えば、私、多分、

「喜劇映画研究会」が、一般的なサイレント映画上映会のように、映画専門のピアニストや活弁士での上映を専門になさっていたら、こんなつながりは続かなかったと思います。

新野さんに、深く突っ込んで「なぜ、あえてミュージシャンによる演奏を続けているのですか?」

と、聞いたことはないのですが、おそらくは、大変な「目利き」であることには違いないと思うのです。

そして、うまく言えないのですが、新野さんや、その周りの方々に、私は、「TOKYO」を感じます。

古い欧州、アメリカのフィルムであっても、それが現在の「TOKYO」発になる。

そんな嗅覚を持って、出版などの他の事業とのスケジューリングをして、興業をなさっているご様子です。

<4 月世界旅行のオマージュ>

そんなおつきあいをしていく中で、私も子育てがひと段落して、兼業ミュージシャン活動を古巣の「こどもの城」などで展開していきます。私の主宰する楽団のコンセプトは、「宇宙の放浪楽師」で、中世バグパイプのドローン音を響かせながら、太鼓の波動もあり、ストーリーは、宇宙のSFです。もちろんメリエスの「月世界旅行」もオマージュしました。

「ぺとらの月世界旅行」

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2009年 「こどもの城」秋まつり 4回公演

お子様むけ、クイズも入った音楽ショー

 

「ぺとらの新世界旅行」

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2012年 そら庵、音楽実験室新世界

2013年 440

創作ストーリーミュージシャンによるオペレッタ作品

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2014年 銀細工まで作っちゃいました。「メリエス月バージョン」と、「パンデイロ(タンバリン)鈴が鳴ります」バージョンがあります。

<5  震災時 無声映画から学んだこと>

そんなわけで、「メリエス月」は、私の中の「マイテーマ」で、あり続けていて、噛めば噛むほど、というものでもあります。

そして、東日本震災時に、こんな経験もしました。

放送自粛で、こどもたちが楽しみにしている地上波のこども番組の放送がなくなり、計画停電で、ビデオさえも動かせなくなった時期に、幼稚園を開けて、保育に園児たちを迎えていると、皆、電気の使えなかった時間に、いろんな過ごし方をしている報告を聞かせてくれました。

そんな中、ヒーローになったのは、
「兄ちゃんが、面白い話を聞かせてくれた」エピソードを、報告してくれる弟くん。
その子は、記憶力抜群で、兄の話をほぼそのまま、クラスのみんなに伝え話てくれていて、その子の周りには、「お話」を求める子たちの輪ができ、普段は疎遠にしている女子たちまでもが、その輪に加わっていました。
「お話の力」ってすごいな、と感じるとともに、
そんな素朴な「物語」と、テレビの違いについて考えるようになりました。
テレビのヒーロー番組には、タイアップ商品のおもちゃや、弁当のふりかけまで、いろんな購買欲が結びついています。そして、脳が、いろんな「欲しい」という気持ちを発信していると同時に、「想像力」はちっとも使えていません。
でも、「お話」を聞いているこどもたちは、一生懸命、想像力を働かせながら、自分の中でイメージを補いつつ、広げているのです。
その時に、私の中で、こどもの頃にCMで断片だけを見て、想像力を膨らませて憧れた「月世界旅行」のことを思いだし、「想像力を膨らませるコドモのための無声喜劇映画」に取り組みたいと思ったのです。

2012年の1月に、園長を務めていた幼稚園に、「喜劇映画研究会」新野さんと、楽士として、こどもの城時代からのおつきあいのパーカッショニスト渡辺亮さんを「観劇会」として、おまきして、園児たちも、それに関連付けて、楽器製作をしたり、手作りのものがたりを作ったりという創作活動に親しみました。

<6 リトミックと喜劇映画との共通点>

そんな道のりを辿って、「メリエス」が好きで、音のない映画に触れるうちに、

キートンやアーバックルなど、CGがない時代なのに、ありえないような身体能力を持って、「絶対リズム感」を感じる素晴らしい演者たちに触れ、また新しい感動を覚えました。

人間たちだけではなく、サイレント映画時代には、サーカスが全盛期で、動物を調教する技術も高かったので、今では考えられない不思議な映像を見ることができます。

 

私が専門として学び、主宰する音楽ラボでは、指導者養成も行っている「リトミック」は、映画と同時代に、今まで貴族社会のものだった「音楽」を庶民が親しむようになり、その教育法が求められたことから発生しましたが、メリエスの作品の中にも、「映画で楽しむ学ぶ音楽レッスン」のような、今のYOUTUBERの人気コンテンツのようなもの存在します。

音のない俳優が演技をし、そこのギャグがあり、次の展開に行くまでの間は、音楽の中のフレーズ感とぴったり一致することが多くて驚きます。映像に音がないからこそ、見ている観客に、「こんなことがあった!」と身体で伝えるために、一定の時間が必要で、ツッコミを入れる相手方がそれを待たずにヒットを入れると、お客さんにとっての原因と結果が伝わりません。

リトミックは、身体でリズムを表現する「時間と空間の芸術」ですから、本当に、そこには、共通点を感じています。

<7 こどもとともに>

28年間、勤めあげた幼稚園が閉園し、私は、残された敷地内に小さい「ラボ」とよぶ音楽教室を設置しました。

長年、ファンとしておつきあいさせていただいていた喜劇映画研究会の新野さんが、こどもたちむけに、「学ぶ」解説をするような上映を企画するために「文化庁派遣」の登録をされるということで、お誘いをいただき、こどもの専門家として、ミュージシャンとして、リトミシャン(リトミックをするもの)として、自分にできることを表現してみたいと思っています。