緊急事態宣言期間により、「こどもの森社保育者研修」に園外からの参加が難しかった先生方やNicotリトミック動画で保育内でのリトミックの情報を集めている先生方にむけて、先日の「タンバリンとフレームドラム」をテーマにしたセッションプログラムについての付記をご紹介いたします。

☆「こどもの森」社の3つの保育園を毎月テーマを持って巡回指導をしています。

☆そのうちの交通アクセスの良い1園にて、系列の園の保育士さんむけに公開レッスンとその後リトミック研修を行なっています。

☆年に2回、むらさきmusicラボにてリトミックの教具、資料、楽器などの視察を兼ねた特別研修を予定しています。

=7月のシーズンテーマ「タンバリンとフレームドラム」=

私の一番好きな楽器は、ブラジルのタンバリン「パンデイロ」です。「パンデイロ」を奏でることを通して、世界中にたくさんのタンバリンの仲間があり、それぞれの楽器の専門家とご縁を繋ぐことができました。ペルシア起源といわれるフレームドラムは、鈴やジングルのないシンプルな構造です。幸いにも私は、最初にフレームドラムのレッスンで、自分で羊の皮を貼るという作業を体験させていただき、その後別の演奏家のWSにて、建築用壁紙を使ってフレームドラムを作成することも体験し、その後は自分で工夫して、こどもたちに紹介したいさまざな世界のタンバリンの仲間を増やしてきました。もちろん購入したものも多数ありますし、パーカッションの師匠(故 小澤敏也)の遺品も少数あります。

私の自作コレクションの中で、保育者らしいのは、鼓笛隊マーチングドラムを輪切りにしたものに羊皮を貼ったものです。大太鼓のものもあります。羊皮は、ブラジル楽器メーカーGOPE社の製品を使用しました。

写真1 研修場所の園に持参したフレームドラムと世界のタンバリンのフルセット。ジングルが5等分に配列されて星型になる「五宝星」が目印の「アラブレク」、私のは魚の皮です。インドの「カンジーラ」は、蜥蜴皮で、ワシントン条約にひっかかるため、レモ社が人工のリザード皮を楽器用に開発したものもあります。

タンバリンというと、幼児の合奏では、ピアニカなどに比べて花形感が薄く、脇役の印象が強いと思うのですが、タンバリンが花形の国は実はいっぱいあります。余談ですが、ブラジルのファフォーという音楽では、トライアングルが花形楽器となります。

「指穴」に対する考え方にも、一石を投じたい思いもあります。必ずしも「指」を入れる必要はないと私は思っていますし、幼児に矯正するような演奏スタイルには、私は気持ちが動きません。ブラジルでは、一晩中の演奏時に木の枝にぶら下げるのに指穴を使ったり、オーケストラでは、スタンドに固定する時に指穴にパイプ挿入します。タンバリンのも、こどもの小さな手にフィットするものもあります。年長が持てる径と、2歳児が持ちやすいサイズは違うと思います。

タンバリン演奏にとって、一番大事なのは、私はグリップだと思っています。洋服の着こなしと同じで、自然に楽器をグリップするためには、まず豊富に触れる機会を持つこと。そして自分のペースで、観察する時間を持つことだと思っています。

大人の意見が食い違うことほど、こどもが戸惑うことはないと思うので、学校の先生が「指穴使用の指導をしたら間違い」とは、言いたくはないですよね。それは、それで言葉による「マウンティング」の仕方を私が教えることになってしまいます。

「まり先生、こんなにたくさんのタンバリンの仲間を持ってるよね。こんなにたくさん持ってるから、まり先生は専門家だよね。だから、その専門家の意見として、指穴に入れて痛いと思う演奏を無理に合奏だからやるのは、まり先生スタイルじゃないんだ」

こどもたちとの信頼関係があってこそ言えることなので、毎回いうことではありませんが、ここでは研修目的なので、言及しておきます。

写真2 タンバリンの仲間のじっくり観察(ラボ小学生クラブ)

写真3 オーシャンドラム(波の音の効果音の太鼓)の鉄ビーズの動きを寝転んで観察(ラボ小学生クラブ)

写真4 指示のない時間 自分でやりたいことを見つけて実践(ラボ小学生クラブ)

手前は、オーシャンドラムの鉄ビーズ観察を二人組みで交代、奥 フレームドラムの音の高低を聞き分けて自分でドラムセッティング

写真5 指示のない時間 再びそれぞれ楽器に向き合った後、相談して仲間で合奏の提案をしていました。(ラボ小学生クラブ)

写真6 保育園でのタンバリンの活動の最初、ファーストミーティングは、ひとり1個ずつのタンバリン(同じもの)から。いろんなバリエーションのものをみせる前に、みんなと同じものを最初にみせて、簡単な活動をすることは、指導上のテクニックです。

写真7 保育園でのフレームドラムと鈴のアンサンブル風景。寝転んでいる子たちは、足首にインドの鈴をつけて鳴らしているところです。幼児の合奏というと、一律に四拍子の規律を必死に守るイメージがあるかと思いますが、このような多彩な音色と音域の楽器が用意できる場合には、演奏を勝手気ままにまかせてみると、バリ島のケチャのようなグルーヴのある不思議な音空間が生まれて、それはそれでオツなものです。

 

写真8 幼稚園園長時代に、お父さん3名の力を借りて大太鼓をリサイクルしてつくった大きなフレームドラムです。節約、清貧がよしとされる保育の中の音楽環境では、ついペットボトル、ヤクルト瓶、空き箱などお金のかからないものに動きがちです。ペットボトルも、左右対象にバランスをとることで良い音になったりもするので、それはまた別の機会に掘り下げるとして、ここでご紹介したいのは、「始末」という昔の言葉の実践です。今風に言えばリサイクルですが、何かいらないものでも、少しの投資をすることで、世界にひとつの掛け替えのない宝物になるという経験をこどもたちにも目撃してほしいと思いました。

このフレームドラムは、前日にこどもたちと一緒に皮をお湯につけて下準備をして、「獣」の匂いを嗅ぎつつ、一晩たって「作品展」イベント中に、保護者さまにも見守られながら「フレームドラム作りショー」のように実践したものです。皮は、この大きさで、¥15000ほどでした。このお金も、保護者会の会計から、「記念品」として出していただき、こどもたちとの思い出になったものです。

この最大なフレームドラムは、今でも現役でラボで活躍中。今回の保育園巡回のシーズンでも各園を巡回予定です。

 

幼稚園で長年使用して古くなったタンバリンの「始末」としては、

☆錆びたジングルを外して、皮にはアクリル絵具でイラストをほどこす。ニュースタイルのフレームドラムとしてリメイク。

☆ジングルと皮も丁寧に剥がす。(太鼓ビョウもとる)両面にデパートの紙袋、包装紙、パラフィン紙、トレーシング紙などを貼る。

手作りで、工夫のあるものと一緒に過ごす時間を持つことで、こどもたちもいろんな想像力が育まれると思っています。

「発表会」「運動会」でのたった1回の保護者発表のために、こどもたちに合奏の訓練をすることも、それはそれでひとつの方法とは思っています。ただ、それだけで「自由」や「余裕」「選択肢」のある活動も、バランスよく指導に取り入れていけたら良いですね。

 

保育園巡回指導、1園目の先日は、緊急事態宣言期間で他園の先生方の見学、研修がなかったので、ゼロ歳児も含む全クラスの指導をするチャンスに恵まれました。小さい子向けには、フレームドラムの上に置いて羽ばたかせる小さい蝶などのぬいぐるみチャームの活動も喜ばれました。

段ボールで大きなお風呂を作って、緩衝材を水に見立ててシャワー遊びができる環境遊びも持参しました。

こどもたちにとって、「まり先生が来る日」は、リトミック指導を受ける日ではなくて、「移動遊園地」ばりの楽しみな日だと、保育園の先生型にも伺っているので、私も一生懸命にその日にできるだけのことをしているつもりです。

 

8月の巡回指導 月シーズンテーマは、「ドラムサークル」です。アフリカの大きな太鼓とひょうたんのついたアフリカ木琴「バラフォン」を使用予定です。(後半2園は、楽器の運搬の都合で変更になるかもしれません)

こどもの森社系列園の研修は、8月は別日に「むらさきmusicラボ」にて、子連れ参加可能のスペシャル研修としました。
事前にお知らせしたテーマは、「オリジナル楽器実験室」となっていますが、参加者や、お連れになるお子様の年齢にあわせた展開にしようとおもっています。

「おはしマレット」は、ひとりひとつずつくらい作れたら良いですね。

リトミックの基礎も、足だけではなくて、指揮など腕の動きや、ピアノが弾ける先生には、こどもと一緒にリトミックをする上でのピアノ演奏のコツなどもお伝えしたいと思っています。

それに何よりも、ご自分のお子様やお孫さまと、まり先生のリトミックが体験できるチャンスです。リピーター、指導園優先など、定員の上の制限はありますが、私も楽しみにしている日です、