① ジェンベ(私)②ブガラブー

先月に引き続きK社の保育士対象の研修が、コロナ禍感染者急増のために流れてしまいましたので、本稿にその代講記事を掲載させていただきます。先におこなったA園での園児さまむけ「アフリカンドラムサークル」ワークショップでの解説としても、保護者様などにご確認いただければ幸いです。(8月研修が流れてしまったことで、楽器の配送の手順に支障が生じたために、後の2園でのアフリカの太鼓を用いたリトミックは、都合がつき次第となることをご了承ください。)

①ジェンベ(ジャンベ)djembe 西アフリカ起源の丸太をくり抜いて、山羊の背中の部分の良い音のする皮を使用しています。奏方により、低い音、高い音などメロディのような表現力で演奏することができます。表現力の高い楽器なので、ピアノのようにリトミック指導に有効的に使用できると考えています。

②ブガラブーBougarabou こちらは、コートジボワール産ということです。牛皮で、ひとつの太鼓ごとに音程をチューニングして、オーケストラのティンパニーのようにメロディーをアンサンブルの中で奏でるそうです。木をくり抜いて、皮を紐で締めあげてチューニングするところはジェンベに似ていますが、役割としてはラテン楽器の「コンガ」に近いと言われています。

ドラムサークルは、できるだけひとり1個の太鼓をサークル状に並べてハンドサイン(指揮)にあわせてアンサンブルをするために、関連性のある太鼓もご紹介しています。運搬の都合上、当日持参できないものもあります。

③写真左から チンバウ  Timbau ブラジルの赤道に近いバイーア州を中心とした音楽AxeアシェやSAMBAREGGEサンバヘギで多くつかわれているそうです。ブラジルの音楽といえば「サンバ」がポピュラーですが、より土俗的、呪術的な暑い気候の土地にマッチした音楽やリズムがあり、日本国内でもサンバチーム同様に、それぞれの音楽ジャンルの愛好家団体やフェスティバルがあります。

私感としての叩き心地、リトミックでの使用感としては、一番ジェンベに近いと感じています。ジェンベと比べて軽量ですし、爪で弾くとスネアドラムのようにロール、連打もできるので、「無声映画」でも使用することもある便利な楽器です。私のはブラジルの有名メーカーCONTEMPORANEA(コンテンポラーニャ)製品です。

④コンガ(Conga)ラテン(中南米)の打楽器 キューバでトゥンバドーラと呼ばれる楽器の事。皮は水牛だそうです。小型で膝ではさむ「ボンゴ」と一緒に演奏されることが多いです。アフリカのジェンベが木を1本丸ごとくり抜いって製作されるとの比較で、樽型に成形されて、リムとボルトでチューニングが可能です。コンガは大きさによって名前が異なり、小さいものから順に、キント、コンガ、トゥンバドーラと呼ばれることや、手の形、フォームにも全て系統的に名前がついています。

ピアノを弾いている身として不思議に思うのは、一般的に低い音の太鼓のほうを右手に置くため、私のように頭の中でピアノ鍵盤に浮かぶ人には逆のように思えることです。

⑤Tambor de Crioula(クレオールの太鼓)楽器や音楽の界隈では、クレオールという言葉は、もともとはヨーロッパ(あるいは別地域)起源のものだけれども、ラテンなどで血や文化が混じって新しく生まれたものを指すと私は認識しています。もしかしたら、この楽器の正式な名前があるかと思います。似た形状の「チンバウ」よりも細い筒型で、立って演奏するのに適しているようです。私がこの楽器を譲り受けたときには、こどもたちを電車のようにつないで並んで演奏すると良いとアドバイスをもらいました。

⑥トーキングドラム(talking drum)セネガルではタマ (tama)というそうです。写真左の黒っぽい方は、師匠から譲り受けたものですが、白い方は「愛地球博」2005のアフリカ館で購入したものです。日本の鼓と同様に、縦糸を締め上げることで、音の高低が表現できるので、言葉の抑揚のように演奏することができます。

⑦バファフォン(Balafone) アフリカ音階の木琴で、マリンバの基となったといわれています。共鳴させるため各音板の下につけられた瓢箪で、穴には蜘蛛の卵のうの薄膜をはることにより「ビリビリ音」のスパイスが加えられた良い音がします。私のこの楽器は、ラボ創設記念に2016年に「西日暮里」のマルメラアダで購入しました。

⑧インドネシアの竹マリンバ(ジョケットブンブン)

私の楽器講座は、あくまでリトミックの一環としての立ち位置なので、アフリカの楽器、アフリカの音階を体験していただく際に、運搬の目処のたつ場所またはラボでの同コンテンツワークショップでは、西洋音階ではない音階のバリエーションとして、インドネシアの音階がわかりやすい竹マリンバもご紹介しています。これは、私がバリ島で購入して、そのまま担いで飛行機にのせて帰ってきたものです。

こどもの城でアルバイトしていた頃は、この「ジョケットブンブン」で、童謡「ぞうさん」のメロディを奏でるプログラムを職員の皆さんと演奏していました。バリ島で購入した際のマレットの先は、古タイヤ素材でした。

⑨チャイムバー 学校放送用のチャイムです。

⑩ ガムラン鉄琴

(11)スリットドラム

いろんな音階がある、または音階にとらわれない演奏を楽しむことを体験する目的としてご紹介している楽器たち。

(12)自作 アトランダム木琴

これは、おはじきや碁石、ビー玉などを落とすことで、より即興性、偶然性を楽しめるように考えて作りました。日本の音楽教育では、とにかく間違えないように、合格するための演奏ばかりなので、正解がなく、間違えがない音楽体験は、なるべく幼児期に経験してもらいたいと思っています。

=リトミック的なポイント・考察点=

正解のない演奏、間違えのない演奏イコールめちゃくちゃ、デタラメ演奏ではありません。ポイントとしては、4拍子として成立するように、1拍目を「強」で強調できること。シンコペーションとするならば、わかるように1泊目を抜くこと。そして、できれば「アフリカ」の曲らしい「韻」があると良いですね。HIPHOP、ラップのような雰囲気が醸し出されれれば、リトミック的にはOKだと思っています。もし、本当にアフリカの伝統を知りたければ、その門を叩くなりぐぐるなど方法はいくらでもあります。リトミックとして教えられるのは、「世界にあるいろんなリズム」そして、「音楽の当たり前は場所によって違う」という多様性を知ること。そして、特徴を掴んで模倣することは、幼児が最初に出会う、動物の模倣を身体で行うことと変わらないと思っています。

=マレット類=

主に自作のこども用の箸に風船や毛糸、輪ゴムなど多様な素材を巻いたマレットを準備しています。ドラムサークル時は、ハンドドラムとして指導しますが、乳児対応や、複数でひとつのドラムを叩く場合は、このような楽器へのダメージの少ないものを使用しています。

☆まとめ☆

アフリカの楽器を中心に体験するプログラムは、単発で「リズムクエスト」としても図書館や公民館、市民ホールなど様々な場所に呼んていただき、私の単体公演としては最も数多く公演してきました。

はじめて出会うお子様たちで、楽器にあまり楽器に慣れていないお子様たちにとって、全員が同じ形、同じ音の例えばタンバリンなどを順番に公平に配布されるのではなく、「好きな楽器を順番に体験してね」というと、いろんなことがおこります。

「自分の好きな楽器が体験できなかった」(独り占めできなかった)

「◯◯がいじわるをして、貸してくれなかった」

など、まるで2歳児くらいの公園お砂場デビューの時の「自分は持ってこなかったけれど、他人が持参したシャベルを使いたかった」とママに訴えるような泣きべそ声が聞こえてきます。

保育園巡回では、楽器の選ばせ方は、まず「早いもの順」でシンプルな1列をつくります。

「はい、並んで」の指示を聞き取れた子は、それまでの説明の流れを注意深く理解していた子たちなので、先頭に並んだ順がたいがい、うまく理解している順なので人気の楽器になることが多く、理解している子たちなので、時間制の交代の意味をわかってスムーズに他の子にも譲ることができるようです。

「早いもの順」の列に並べなかった子は、そこまでの話を聞いていない子、あるいは発達のバランスの問題で、口頭など耳からの情報に疎い子が多いようです。そして、この子たちは、順番が遅かったので、自分の好きな楽器が選べなかった、◯◯ちゃんが空気を読んで自分を優先して変わってくれなかったことに不満を言ったりします。

クラス運営としては、こういった時こそ成長のチャンスなので、「だから先生の話をいつも聞いていなきゃね。」と促し、保育生活では安全の確保が何より大事なので、自然災害などの有事において安全に避難できるくらいのクラス運営、先生との人間関係を構築することにリトミックも役にたつことになります。

イベントなど、はじめて出会うこどもたち、さらにそれが親子参加だったりすると、「話の聞けない人」は、保護者さんの場合もあるので、私もいろんなドラマを経験しました。

リズムクエスト、および私のリトミックを主体としたワークショッププログラムは、「広く浅く」なるべくたくさんの楽器に触れたり、観察してほしいので、譲り合いが難しい人がでてくると、スムーズにいかないこともあります。

また、体験用に提供している楽器たちが、壊れないように管理をすることも大事なのですが、こどもたちよりも、大人が胸ポケットにいれているペンで楽器を叩くなどの行為の結果、インクが皮についてしまったりすることもあるので、目が離せないことも多いです。

カラオケにおいてあるチキンを食べながら油だらけの手でも触って良いと思われるプラスチック製のタンバリンや、100円ショップで買いなおせる楽器ではない楽器。

まり先生が本当に大切にしている楽器。イベントが終わってラボに帰ったら、コツコツ、ひとつひとつメンテナンスをしている楽器だからこそ、このようなワークショップとして成立していけているのだと思います。

K社の研修』6月は、「音と線」、7月「タンバリンとフレームドラム」、そして8月はアフリカン太鼓と、順々にステップを踏んできている楽器を使ったリトミックは、9月の「実験楽器」でひとくくり。10月以降は、それを踏まえて、再び身体を楽器としてつかうリトミックにフォーカスする予定です。(B園、C園は、楽器運搬の都合上、年間プログラムが前後する可能性があります。)

むらさきmusicラボでも、同月中は、同プログラムの中でのアレンジしたリトミックを複数回行う予定です。感染数状況により、オンライン対応、ビジター受け入れ中止などの対応が異なります。

☆9月の保育士研修☆

感染者数拡大の状況を鑑みて、9月の保育士研修はA園ではなくオンライン開講の予定です、日程など決まりましたら、「こどもの森」関係者さまにご一報させていただく方向です。

アフリカの楽器を使ったリトミックの付記でした。楽器の名前などをご参考に、ご興味のあるところでYouTubeなどでさらに見識を広げていただければ幸いです。